研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

昨日のシノドスの若田部・熊谷対談(前編)についてのつぶやきの補足

昨日、αシノドスメルマガvol.120の熊谷晋一郎×若田部昌澄 / 「市場とケア(前編)」

http://synodos.jp/mail-magazine

についてつぶやいたのだが、

http://twilog.org/dojin_tw/date-130320/asc

それについて、知人に補足のコメントを送ったので、それを加筆修正してメモっておく。

私のつぶやきについては、例えば、「公的負担/私的負担」や「再分配と経済成長」については、ただの勉強メモだが、1年前のつぶやきで、いくつか最低限の参考文献を挙げながら、以下のようにつぶやいたことがある。

メモ:公的負担/私的負担、税と労働供給、政府規模と経済成長
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20120109#p1

ここに載っていない重要な参考文献として、古くは

Ram(1986)Government Size and Economig Growth A New Framework and Some Evidence from Cross-section and time-series data, AER
http://www.jstor.org/stable/10.2307/1804136

などもあり、近年の引用件数が比較的高い文献に限っても、

Afonso&Furceni(2010) Government size, composition, volatility and economic growth
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S017626801000008X
Checherita-Westphal &Rother(2010)The Impact of High and Growing Government Debt on Economic Growth: An Empirical Investigation for the Euro Area
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1659559

などがあり(後者は政府のサイズではなくて負債のサイズだが)、2011年にはJournal of Economic Surveyに以下の展望論文も掲載されている

Bergh&Henrekson(2011)GOVERNMENT SIZE AND GROWTH: A SURVEY AND INTERPRETATION OF THE EVIDENCE
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1467-6419.2011.00697.x/full

また、直近の日本における消費税増税と経済成長や消費の関係に関しては(こちらは若田部氏のほうがずっと詳しいと思うが)、こちらもただの勉強メモだが、3年前にブログでメモしている。

不況下の消費税増税(or財政再建or社会保障強化)がマクロ経済に与える影響
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20100609/p1

これは個人的な見解だが、一般向け言説においても、できるだけ明示的に、これらの学術的分析をある程度網羅的に踏まえながら検討・考察したほうが、素人も専門家もその中間くらいのウォッチャーも、得るところは大きく、議論も建設的になると思っている。

私は若田部氏のような経済学史の専門家が経済論壇にいる意義は大きいと思っている一方で、細分化された学問領域の中で、膨大な先行文献を踏まえながら、自分の「限界的貢献」を時間をかけてアウトプットしていくという作業によくも悪くも浸っている「アカデミズムの中の人」にとっては、経済論壇における単純化された「経済学」の言及のされ方に不満を持っている人が多いのは事実だろう。

このような、経済論壇と経済学アカデミズムの社会的機能やアウトプット方法の違いによる無用な摩擦を減少させる効果的かな方法の一つは、言論の根拠となっている論文や本を「常に」明らかにしつつ、かつ対立する論点や論者に「常に」明確に言及しつつ、そうした「マッピング」の中で時論や持論を展開する、ということだと私は考えている。このような作法はアカデミズムの中ではいわば「前提」である(のが少なくとも姿勢としては求められている)のに対して、経済論壇サイドにはこのような面倒なことをするインセンティブは、論者や編集者にはあまりないだろう。

しかし、このような作法を課すことによって言論の内容が難しくなるわけでもないし、例えばシノドスのように両者の橋渡し的な機能を謳っている言論の場では、このような引用や参照のルールを、執筆サイドに任せるのではなく、編集の仕組みとして工夫することによって、言論の場として独自の地位を確立することも可能なのではないだろうか。

以前、熊谷氏とツイッターか何かでお話したときも、「とにかく経済学や経済学者のマッピングがわからず、どう考えたらいいのかわからない」的な問題意識を持っているようだったし、似たような話は非経済学者からよく聞く。それならばなおのこと、上記のような経済学における古典的&最新の参考文献に言及しながら議論したほうが建設的だったのではないか、と感じた。経済学史のプロである若田部氏は体系的な研究マッピングは得意だろうし。

生活保護受給者の医療費の自己負担導入についてメモ

http://mainichi.jp/select/news/20121003k0000m010092000c.html

三井辨雄(わきお)厚生労働相は2日、生活保護をめぐる自身の発言について訂正する記者会見を開いた。初入閣の三井氏がスタートからつまずいた形で、今後の国会答弁などに不安を残した。

 三井氏は2日の閣議後の会見で、全額無料の生活保護の医療費に関し、「全部無料はあり得ないということも含めて検討したい」と述べ、自己負担導入の容認ともとれる発言をした。記者からただされると「全額無料廃止ではない」と修正。さらに、2日夕に再度、会見を開き、「発言の趣旨は、さまざまな意見を聞きながら医療扶助の適正化を強化していく必要がある旨を述べたものだ」と釈明した。

前に医療扶助および生活保護受給者の医療負担の自己負担化についてつぶやいたので、それを一部修正・追記して転載。

「医療扶助も濫用防止と無料での医療受給権確保のためのフリーアクセス制限などがありえる」と書いたがスウェに来て以来たまに考える。スウェは日本のようなフリーアクセスはなく我が県は予約制の一般医受診の他、市内に数箇所予約なしで行ける一般医の診療所がある。専門医への直接アクセスは不可。

専門医への直接アクセスや選択肢がないのは、日本の医療になれた身からすると不便極まりないし不安も感じる。一方で、年間の医療費上限は10000円ほどと低額になっており、それ以降は無料(薬は20000円ほど)。上限までの一回ごとの受診料は原則定額制で1500-3000円ほどか。

厳密な議論ではないが、日本で老人医療費無料化が廃止されたように、おそらくフリーアクセス(コンビニ的感覚での医者利用@日本)と低い自己負担(@北欧やイギリスやカナダのNHS)には一定のトレードオフがあり、いいとこどりをすることはどの国でも財源制約上難しいのではないか。(これは医療政策研究者にはよく知られた事実だと思うが、今は文献参照する時間ないのでスルー)

生活保護の医療扶助も、制度上はフリーアクセスではないようだが、「自己負担無料」であることによる需要サイド、供給サイドのインセンティブからの過剰診療が問題視されてるようだし、だから医療扶助の生活保護からの切り離し(国保への組み入れ?)や自己負担導入の議論がなされているのだろう

生活保護受給者への自己負担導入は、医療ニーズが高い受給者の受診抑制を生むのはおそらく間違いない。「受診の有無にかかわらず標準的自己負担額を保護基準額にを上乗せした上で自己負担導入」という林正義氏のより穏当な提案(日経経済教室2011.12.26)でもこの問題は避けられない。

折衷案として、アクセスは不便だが無料(or上限が低額)で質が担保された(公的or民間)診療所と、現行制度のフリーアクセス&3割負担の併用はどうか。これを万人に適応すると色々摩擦があり見通しわからなくなるが、生活保護受給者を対象にこうした制度にすることはできないか

「万人に適用すると見通しわからなくなる」というのは、万人に対して1.アクセスは不便だが無料(or上限低額)の診療所と2.現行制度下のコンビニ的3割負担診療所の両方を保障するのは個人的にはいいことだと思うが(日本の3割負担や高額療養費は低所得者層や高医療ニーズ層には負担が重いという立場なので)、現行の病院・診療所にとって無料診療所は脅威だろうし、医療サービスの二極分化に繋がる可能性もありそう。

なので現行制度を前提とした上で、生活保護受給者には、非受給者と同様どの病院にも3割負担で通ってよいことにして、かつ指定診療所への無料アクセス(ただし予約制や厳しめのレセプトチェックなどの制約あり)も保障する、というのはどうだろう。この場合、受給者の(3割負担の)病院へのアクセスをあまり悪化させないように、林案のように一定額保護費に上乗せしてもいいし、そこに医療ニーズ判定を導入することも、行政的に可能ならばありうるかもしれない。

生活保護受給者の医療扶助の問題は、非受給者の低所得者や医療ニーズの高い人々の医療アクセスや医療費負担の問題とも地続きの問題なので、フリーアクセス&3割自己負担&高額療養費制度という日本の医療サービス利用のあり方そのものをどう評価するかという難題とも関係してくるので、今後も考えていきたい所存。

思いつきなので、玄人&素人の皆さんのフィードバックがほしいところです。

参考文献:林正義 経済教室(2011.12.26)「生活保護、対象範囲限定を 国保・年金と併せ制度改革」

社会保障・税一体改革の3党合意(2012.6.15)関連メモ(気が向いたら拡充)

社会保障・税一体改革で民主・自民・公明の3党実務者合意案

3党実務者確認書
http://www.dpj.or.jp/download/7217.pdf
社会保障・税一体改革に関する確認書
http://www.dpj.or.jp/download/7218.pdf
税関係協議結果
http://www.dpj.or.jp/download/7219.pdf

民主党

社会保障・税一体改革で民主・自民・公明の3党実務者合意案まとまる(民主党ウェブサイト)
http://www.dpj.or.jp/article/101147/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E3%83%BB%E7%A8%8E%E4%B8%80%E4%BD%93%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%81%A7%E6%B0%91%E4%B8%BB%E3%83%BB%E8%87%AA%E6%B0%91%E3%83%BB%E5%85%AC%E6%98%8E%E3%81%AE%EF%BC%93%E5%85%9A%E5%AE%9F%E5%8B%99%E8%80%85%E5%90%88%E6%84%8F%E6%A1%88%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%81%BE%E3%82%8B

衆院社保・税一体改革特委】3党提出法案・修正案を趣旨説明
http://www.dpj.or.jp/article/101171/%E3%80%90%E8%A1%86%E9%99%A2%E7%A4%BE%E4%BF%9D%E3%83%BB%E7%A8%8E%E4%B8%80%E4%BD%93%E6%94%B9%E9%9D%A9%E7%89%B9%E5%A7%94%E3%80%91%EF%BC%93%E5%85%9A%E6%8F%90%E5%87%BA%E6%B3%95%E6%A1%88%E3%83%BB%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E6%A1%88%E3%82%92%E8%B6%A3%E6%97%A8%E8%AA%AC%E6%98%8E

自民党

【FAXニュース】No.162 「子ども・子育て新システム」には反対です(自民党2012.5.25)
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/recapture/pdf/064.pdf

【FAXニュース】No.163「社会保障と税一体改革」について(自民党2012.6.27)
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/065.pdf

公明党

公明の福祉ビジョンが前進(2012年06月17日)
http://www.komei.or.jp/more/realtime/201206_01.html

その他

西沢和彦(日本総研)≪税・社会保障改革シリーズ①≫社会保障・税一体改革3党合意の評価と課題(2012.6.21)
http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/policy/pdf/6156.pdf

内閣官房

社会保障改革」トップページ
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/index.html

社会保障・税一体改革に関連する国会提出法案等
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/houan.html

内閣府経済社会研究所論文VS厚生労働省あるいは鈴木亘VS権丈善一

「年金の世代間格差、厚労省内閣府の試算に反論」(日経新聞 2012/4/24 21:30)
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819481E0E6E2E0978DE0E6E2E6E0E2E3E09797E0E2E2E2

厚生労働省は24日、年金の給付と負担の世代間格差を巡る内閣府の試算に反論した。50歳代半ば以下の世代で支払いが多くなるとの試算に対し、前提となる指標などに関する疑問点を列挙。年金の財政方式についても現行の仕組みの意義を訴えた。年金制度の改革を求める声が相次いでいるのに対抗した形だが、現状を肯定するだけの路線には批判も目立つ。

これは4月24日の年金部会 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000294x3.html の参考資料1、2の話のようだが(年金部会の話だということくらい書いてほしい日経新聞)、この元ネタは第4回社会保障の教育推進に関する検討会資料 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000026q7i.html の資料2-1,2-2。

(それにしても、研究者個人(4人の共著)のワーキングペーパーを、内閣府の試算といってよいのだろうか。そうだとすると、ESRI Discussion Paperは全部内閣府の見解と報道してもよいことになってしまう。厚生労働省厚生労働省で、「2012 年 1 月 内閣府経済社会総合研究所から ESRI Discussion Paper NO.281 として公表(研究者の個人論文)」という形で引用しないで、著者たちの名前を書くべきでは。)

で、後者の「検討会資料」の資料2-1には「※3,6,11,12,19,21,23,25,26,27ページの図表については、慶應義塾大学 権丈教授提供による」と書かれているように、実質的に年金部会の参考資料2および教育推進に関する検討会資料の資料2-1は権丈善一http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/ のペーパーといってよいのかもしれない。そして批判対象のESRI Discussion Paper (http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis290/e_dis281.html) はもともとは鈴木亘氏の研究をベースにしているので、これは実質的に(待望のw)鈴木氏VS権丈氏という側面が強い。

権丈氏は、ウェブサイト http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/ では自説を常々展開しているが、このような形で東洋経済や他のメディアの記者、そして今回のように厚生労働省を使って自説を展開することが多い。それはかまわないが、できれば個人名で論文(査読論文にはならなそうなトピックなのでワーキングペーパーで)にして、しっかり論争をしてほしいものだ。そしてもっと議論が(もっとガチンコで)盛り上がってくれるといいと思う。

現状は、お互いがお互いを「誤解している」「理解していない」と罵り合っている状況で、年金問題の議論の対立点が素人にはなかなか見えてこない。そして日本の経済学会上あるいは経済学会に留まらない年金論議全体での鈴木氏や権丈氏のポジションなど知る由もない素人たちの間では、ただただ経済学不信は高まっていく(かもしれない)。(追記:そういう意味で、比較的具体的に「世代間格差」論を批判したこの厚生労働省資料は議論を進める契機になりうる。)

それはともかく、おそらく鈴木氏はそのうち反論を載せると思うが、その前に小黒氏がアゴラに反論を載せ、それについて私はツイッターでメモしたのでここに改行し直しつつ転載。

これはまったく議論がかみ合っていないのではないか。。。>厚労省資料(世代間格差に対する反論)の簡易検証 http://t.co/UYTlvFZq

厚労省ペーパーの論点を読んだとおりにざっとまとめると

1.保険給付の期待値以外にリスク軽減による期待効用増も考慮すべき
2.割引率の設定次第で「給付」の現在価値換算の数値が変わり、賃金上昇率ではなく利回りを割引率とすると「世代間格差」が大きくみえる
3.技術進歩があり世代により中身が異なる医療・介護をただの「費用」として捉えて割引現在価値換算することに意味はない
4.事業主負担をなくして本人負担のみにした場合に事業主負担が100%従業員の賃金に転嫁されるとは考えにくいのでこの部分を全額本人負担として計算できるかは不確か
5.給付と負担の関係を給付の保険料支払いと給付の割引現在価値の「引き算」で求めているが、年金制度ではその時代の給与水準に対して何%もらえるかという「所得代替率」が一般的な指標

以上が「技術的論点」らしい。

一方、その後の「定性的論点」はぐちゃぐちゃ書かれていて分かりにくいが、

6.年金・医療・介護の「恩恵」として、受給世代になったときの給付だけでなく、老親への私的扶養軽減効果を考慮すべき
7.前世代が築いた社会資本の恩恵を考慮すべき
8.教育や子育て支援は現在の若者のほうが充実している
9.親からの財産相続を考慮すべき

という感じ。

そして最後に2の論点について「世代ごとの人口構成が同じと仮定すれば、世代間格差の生じる余地のない公平な制度」においても「“割引率”の仮定や“賃金上昇率”を見込むことによって、割引現在価値換算額でみた拠出の合計額と給付の合計額の“倍率”に違いが生じ」、「大きな割引率で割り引くと 1 を下回る」ことを、参考資料の「ケースIII」で示している。これはたんに割引率が大きけりゃ人口構成や制度設計が公平でも負担と給付の間の「世代間格差」は計算上生じうる、という話の傍証のようで、これをもって内閣府ペーパーを全否定しているわけではない。

それに対して小黒氏は、この参考資料の「ケースII」に注目し、『第6世代から第12世代の年金給付と負担の倍率(=給付計÷拠出計)は「1」と計算される。どうやら、厚労省はこのようなケースもあるから、世代間格差の議論は確かなものとは限らないと主張したい模様である』と書いている。そしてその上で、「(賦課方式が引き起こす)世代間格差は、少子高齢化の下での問題であり、人口が不変または順調に拡大するケースでは、そもそも議論の必要がないテーマなのである」と最後に結論付けている。だが参考資料で人口不変としているのは単に割引率の効果を見るための便宜的設定では。

いずれにせよ年金問題の門外漢からすると、厚労省・権丈ペーパーの「参考資料」部分(エクセルシート計算部分)ではなく、1〜5の技術的問題点と6〜9の定性的論点すべてについてのガチバトルを期待。あくまで印象論だが1〜9全ての論点について経済学はフォーマルに扱うことができる気がするし。

メモ:おおやにき氏エントリ「あるべき姿とその実現」へのコメント

ちょっと前に

あるべき姿とその実現
http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000846.html

のコメ欄に書いたのでメモ。

これについて今日ツイッターでちょっとつぶやいたのでそれもメモ

いつも割と納得なナシナリさんだが、今回は、1.ピアレビューのくだりは権丈氏にもそのまま当てはまる。権丈さんピアレビューに論文書けw 2.竹端-おおやにき論争についてはおおやにき氏エントリコメ欄に書いた通り。回答もらってるのに今気づいた。> http://t.co/qfBMVpyv
posted at 17:09:59
おおやにき氏の続きのエントリhttp://t.co/OjBgh3sR でも自分のコメントに言及されているのを発見。これに対する私の反論は、消費税10%で足りないなら他も含めてもっと税収増を図れというもので、あえて「ニーズ高い者同士の分捕り合戦」話に持ち込みたい意図が良く分からない
posted at 17:17:02
ちなみにこれは短期的なリフレ派の「消費税増税反対」ともそんなに対立しない。現在の消費税増税の問題点が、増税分が(社会保障増ではなく)国債発行減や国債償還に多く回されて緊縮財政的な色合いが強いことならば、消費税増税ストップではなくて全部社会保障増に使うことを提案したっていいわけだし
posted at 17:26:06
ただこんな話=「消費税増税は全額社会保障支出増」(おおやにき氏を意識して障害者福祉分を最低3000億くらい(てきとう)含むものとする)に回し緊縮財政回避。財政再建はリフレで中長期的に)を支持する人がリフレ派にどんくらいいるかわからないし、こういうヨタ話はこのくらいに。
posted at 17:35:13
ちなみにリフレ派議員の金子氏は去年こう言っている http://t.co/Umb1ZTRu 消費税増税の「財政再建分」割合を大幅に減らしてほぼ全て「社会保障強化分」に回せという論陣を張る選択肢はリフレ派にはなかったのだろうか。一部の論者を除いてあんまりなさそうだが、求む情報。
posted at 17:42:38
そうですね。どう取りどう回すかで分捕合戦の様相は変わるので工夫必要ということですねRT @bn2islander 増税に限界がある以上、私も、ニーズ高いもの同士の分どり合戦になってしまうと思います。権丈先生が医療費の財源に消費税ではなく健康保険料の増額を唱えているのと同じ意味では
posted at 17:51:13
ちなみに我がコメ http://t.co/yfgh9eRG が皮肉られてる大屋氏のこのエントリ http://t.co/OjBgh3sR は細かい所除いてそんな異論ない。ただ竹端氏の言論を、このエントリ最後の「地道な作業」と見るか「大学に所属する政治運動家」と見るかの違いはある。

さらにマシナリさんのコメ欄にもしつこく書いたのでメモ。

学術知と実務知の間にあるはずの長い距離の自覚と無自覚
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/?no=509

メモ:高橋洋一氏が反論!「その消費増税論議、ちょっといいですか」&スウェーデンの社会保障事情

高橋洋一氏が反論!「その消費増税論議、ちょっといいですか」
番外編 日銀の金融政策で財政再建と円安誘導は簡単にできる
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20120313/229746/?P=1

いろいろ勉強になるが、2箇所、(本記事のメインの内容からすると瑣末な点で)事実誤認というか、内容が不正確な点をメモ。

そもそも消費税は、普通の国では地方の一般財源です。だから分権化した後、地方の行政サービスを向上させるために地方の消費税率を上げますという話なら分かる。消費税を国の税金として社会保障に使おうとしているのがおかしい。

高橋氏はいつもこう言っているが、

租税負担率の内訳の国際比較(国(連邦)税・州税・地方税
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/022.htm

を見るとわかるように、たしかに消費税を地方(特に州レベル)に割り当てている国はあるけれども、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンと、アメリカ以外の国では消費税は中央の一般財源としてそれなりに入っている。

次に、

スウェーデンも歳入庁がありますね。スウェーデンでは、個人は社会保険料を払っていないですね。社会保険料や年金は法人税が財源でしたね。

これは質問者のコメントだが、「法人税が財源」というのはミスリーディングだと思う。確かにスウェーデン社会保険料社会保障拠出金)は雇用主負担がほとんどだが、法人税とは別。

参考

飯野(2008)スウェーデン社会保障所得再分配
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/18429304.pdf

内閣府経済社会総合研究所(2005)スウェーデン企業におけるワーク・ライフ・バランス調(が株式会社富士通総研に委託)
第2章第6節 スウェーデンと日本の国民負担の比較
http://www.esri.go.jp/jp/archive/hou/hou020/hou014.html

高山憲之(2008)スウェーデンにおける税と社会保険料の一体徴収および個人番号制度
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~takayama/sweden0804.pdf

伊集守直(2004)スウェーデンにおける1991年の税制改革
http://kamome.lib.ynu.ac.jp/dspace/bitstream/10131/3419/1/KJ00004763244.pdf

ちなみに、スウェーデン社会保障は、現物給付は地方税(登録や納税は税務署)で、現金給付は社会保険で、という住み分けがかなり明確であり、分かりやすいのが特徴である。神野・井手(2006)『希望の構想』は、このようなスウェーデン型の現物給付と現金給付の住み分けを提言している。ただ、特に介護と医療が現行の日本の(中央集権型の)社会保険制度とかなり異なり、地方政治の状況もだいぶ違うので、日本でこれをすぐに実現するのはかなり厳しいと思う。あくまで最終目標あるいは理念であり、改革は段階的にということなのかもしれないが。

希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン

希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン

さらに言うと、スウェーデンでは、多くの手続きはオンライン化がかなり進んでいる印象がある。自分もプライベートでそれなりの地方自治体サービスを受けてきたほうだが、未だに市役所に行ったことは一度もない。もちろん税務署や移民局は住民登録や滞在許可申請で行く必要がある。

スウェーデン社会保険庁(英語ページ)
http://www.forsakringskassan.se/sprak/eng/

スウェーデンの税務署
http://www.skatteverket.se/2.18e1b10334ebe8bc80000.html

自治体サービス例:ストックホルム市の保育園のページ(オンライン申請・登録・マイページへのログインができる。他市も似たような感じ)
http://www.stockholm.se/ForskolaSkola/forskola/

ついでに、参考までに日本の「先進自治体」三鷹市の「みたか子育てネット」のホームページ

http://www.kosodate.mitaka.ne.jp/

わかりやすいけど、申請のページはこんな感じ。申請書類の数のレベルが違う。
http://www.kosodate.mitaka.ne.jp/download/

スウェーデンには個人番号(personal number)が存在し、税務署、社会保険庁自治体間の情報シェアが容易なので、紙ベースの申告書や証明書は必要ないケースが多く、銀行IDなどを使って自治体ウェブを通じてオンライン登録し、サービス申請と簡単な自己申告をする(もちろん、全部が全部そういうわけではない)。

メモ:「@dojin_twさんによるエスピン・アンデルセン『平等と効率の福祉革命』コメント」

ツイートしたのをまとめて頂いたのでメモ。コメント欄に補足も書いた。解題の評価はともかく、とにかくいい本であり、訳してくれた大沢真里氏らには感謝。やや学術的だけど、この本を出発点にいろんな議論ができる。そういう本。

@dojin_twさんによるエスピン・アンデルセン『平等と効率の福祉革命』コメント
http://togetter.com/li/253122?f=tgtn

ネタ元はこの本です↓

平等と効率の福祉革命――新しい女性の役割

平等と効率の福祉革命――新しい女性の役割

この本と似たような内容で、もう少し一般向けのものはこちら。

この本については昔ブログで簡単なコメントを書いた。

経済学と社会学の幸福な協働
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20090119#p1

ここでの

新奇な発見や高度な分析手法があるわけではない。優れた経済学・社会学の実証研究の蓄積によって明らかにされた経済的・社会的事象やその因果関係が、彼の確かな社会学的視点によって有機的に結び付けられ、分析される。そして、それらの事象が生み出す様々な問題に対する説得的な解決の方向性が示される。

というスタイルは、『平等と効率の福祉革命』にも受け継がれ、バージョンアップされている。

エスピン・アンデルセン関連エントリ:

富永健一(2001)『社会変動の中の福祉国家 家族の失敗と国家の新しい機能』
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20050314#p1

子育て支援と子どもの福祉メモ
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20060228

日本の左翼は何を学べばよいのか。
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20061016#p1

『福祉社会の価値意識 社会政策と社会意識の計量分析』
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20070201#p3

フローレンスモデルについてのメモ
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20070523

イギリス社会学の伝統を踏まえた実証的貧困研究と日本の「主流派」社会学におけるイギリス社会学の不在
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20081220#p2

経済学と社会学の幸福な協働
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20090119

東アジア福祉国家論メモ
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20100226

メモ:筒井淳也「福祉国家に対する冷静な視線――福祉レジーム論とジェンダー
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20100809#p1