研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

フジサンケイビジネスアイ:社会保障 安倍氏、医療費抑制に重点(とアレルギーの医療費雑感)

フジサンケイビジネスアイ:【総裁選 政策比較】社会保障 安倍氏、医療費抑制に重点 麻生氏−高齢者雇用 谷垣氏−消費税上げ
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200609150025a.nwc

安倍晋三官房長官は、社会保障費の抑制に重点を置く。告示後の3候補合同記者会見でも、ある胃薬の固有名詞を出し、「これまでは医師の処方箋(せん)がなければ買えなかったが、規制緩和によって薬局で買えるようになった」と事例を挙げながら、ジェネリック(後発)医薬品の活用などで質を落とさず、医療費の抑制が可能だと指摘した。

 さらに、医療機関での窓口負担を引き上げることで、医療機関へ足を運ぶ回数が減り、医療費の総額抑制につながることや、本当に介護が必要かどうかの見極めを強化するといった、既存の医療・介護のカバー領域の見直しも強調する。

 麻生太郎外相は、社会保障に対して過度の不安は不要だという。その上で、今後の社会保障費を抑制するため、高齢者の労働環境を整備する必要性を強調する。「これまでは高齢者=(社会保障を)受ける人という構図があった」がこれを改めるというわけだ。

 高齢者の働く機会を広げ、社会保障を受ける側から、その財源となる税金を納める側に移ってもらうことで、社会保障費削減の効果は数倍になるという。

谷垣禎一財務相は、「現在の社会保障の問題は低負担・中福祉という構造にあった。国民は今後も低福祉を求めない」として、中負担・中福祉型への転換を図っていく考えだ。このため、消費税の税率を社会保障目的を明確にした上で2010年代半ばまでに10%へ引き上げることを公約している。

個人的には、財源云々はまだわからないことも多いので保留にするとしても、この三人の中では谷垣氏の立場に近いかも。

安部氏が言及している医療の自己負担引き上げによる医療受診抑制効果については、それなりに実証研究があったと思う。まぁそれは置いといて、アレルギー性鼻炎のために定期的に耳鼻科に通わなければならない(はずなのに金がけっこう高いのでたまにしか通っていない)自分の経験から直感的に考えると、自己負担引き上げの低所得者層への受診抑制効果はそれなりに大きいと思われる。もちろん医療でも、癌か、糖尿病か、風邪か、深刻なアレルギーか、軽いアレルギーか、などなどによって所得弾力性や価格弾力性はかなり変わってくるんだろうけど。

ちなみに、私はそこそこ悪い方のアレルギー性鼻炎だが(おととし手術して多少よくなったが)、まともに2週間おきに病院にいくと、3割自己負担で一回3500〜4000円くらいだから、年間10万くらいかかる。だから症状が多少改善されることを分かっていながら、少し病院から足が遠くなっている。もちろん、病院にいって薬を貰ってもアレルギーの症状は完全には治らないこと(すなわち受診や薬から得られる効用がそこまで高くないこと)も一つの要因だが。

また、アレルギーは鼻炎だけでなく、結膜炎や皮膚炎の症状も同時に現れることが多い。私は鼻炎以外は深刻ではないので眼科や皮膚科にはごくたまぁにしかいかないが。と考えると、アレルギーのひどい低所得者層はけっこうなたいへん負担だ。3割負担でまともに耳鼻科、眼科、皮膚科に通うとすると、年間20万程度かかるかもしれない。すると病院に通うのを控えて、多少アレルギーの症状(目のかゆみ、肌のかゆみ・あれ、鼻づまり等)を我慢する人たちも一定数いるにちがいない。

そういえば、花粉症について経済学的(ただ単に財政的だったかな?)な視点から書いていた論文を見かけたことがあるが(たしか季刊・社会保障研究)、アレルギーについてやってみるのも興味深いかもしれない。

とくに結論はないが、ちょっと思ったことを書いてみた。

関連項目:

「小さな政府」は国民に支持されているのか?」(2005-12-28)
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20051228#p1

「歳出削減」(2006-2-15)
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20060215#p1

介護保険、自己負担2割に・自民検討」(2006-5-17)
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20060517#p1

メモ:『医療扶助:生活保護者に「1割」自己負担 厚労省が検討』(2006-7-17)
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20060711#p1