研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

努力と人間についてのメモ

いやそんな大げさな内容ではないですが。

やまのい和則(衆議院議員 民主党)のメルマガ(第919号(2007/02/16))
より。

昨日、母子家庭の方々のお話をお聞きする機会がありました。
あるお母さんは、幼稚園と小学生のお子さん二人を育てながら、
9時から5時までの事務の仕事と、晩7時から夜中1時までのコンビニの
仕事をしておられます。
それで手取りが10数万円。いわゆるパート2つの掛け持ちです。 
私が心を痛めたのは、「子どもが熱を出したら、早退するから」など
という理由で、「なかなか正規の仕事で会社が雇ってくれない」という
お母さんの訴えです。

ちなみに、母子家庭のお母さんの就業形態は、正社員45%、パート・
アルバイト27%、契約・嘱託社員12%、派遣社員11%です。
このような母子家庭の子どもに対する児童扶養手当が2008年から
減額されます。冒頭のお母さんも2万円減額されます。
政府の言い分は、
児童扶養手当をずっと満額支給していたら、働く意欲につながらない」
というものです。
しかし、働く意欲も何も、多くの場合は、正社員になりたくても
なれないのです。そのような社会状況を放置して、母子家庭の
お母さんに努力だけを強いるのは無理があります。

うーん。民主党の主張する「最低賃金の引き上げ」とか「正社員とパート労働者の均等待遇や正社員への転換促進」とか労働市場そのものを改造することについてはちょっとよく分からないことが多すぎて何もコメントできないが、児童手当、児童福祉手当、生活保護母子加算など、政府支出側でも近年いろいろ改定されているからもっときちんとフォローしておきたいところ。

あとやまのいさんのこういうところはいいですね。

安倍総理は、「努力した人が報われる社会を」とよく言います。
しかし、子育て、家庭の事情、障害、病気などで、努力したくても
努力できない人々も多いのです。そのような人々に対するセーフティー
ネットづくりこそが、政治の役割です。

このブログでは、自分が介助の仕事をしているということもあってよく障害者を取り上げている。しかし、いわゆる「健常者」に括られる人でも、ここに挙げられている子育て、家庭の事情、障害、病気はもちろんのこと、性格的な問題とか体力的な問題とかで、バリバリ努力できない人ってのは案外たくさんいるものです。もちろん、やまのい氏が最初に紹介したお母さんは努力してもあまり報われていないわけですが。

でも(ここからは私の個人的な経験的仮説ですが、たぶん簡単なアンケート調査くらいはあるでしょう)どうやら強くて努力できる人たちの中には、弱くて努力できない人たちが世の中に存在することを上手く理解できない人もいるらしい。あと、弱くてそんなに努力することに向いていない人たちの中でも、無理して頑張ってボロボロになりながら、さらに弱かったりさらに努力できない人たちを見下したりすることもあるらしい。もうちょっと余裕を持てないものかと思うのですが、まぁそんなものなのでしょうか。

一方で、努力は努力でやっぱり認めてあげたほうが人間や経済はいきいきとするわけで、少なくとも今の市場経済では強くて努力できる人たちにはそれなりにおいしい思いをさせてあげないといけない。経済的に上手いおとしどころを探すのが難しいという問題はもちろんのところ、人間的にも上手いおとしどころを探すのはなかなか難しいのかもしれない。

どうしようもないヨタ話になってしまった。