研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

北九州市の餓死事件

http://www.asahi.com/national/update/0711/SEB200707110049.html朝日新聞より 7/11)

北九州市小倉北区の独り暮らしの男性(52)が自宅で亡くなり、死後約1カ月たったとみられる状態で10日に見つかった。男性は昨年末から一時、生活保護を受けていたが、4月に「受給廃止」となっていた。市によると、福祉事務所の勧めで男性が「働きます」と受給の辞退届を出した。だが、男性が残していた日記には、そうした対応への不満がつづられ、6月上旬の日付で「おにぎり食べたい」などと空腹や窮状を訴える言葉も残されていたという。

(中略)
男性は肝臓を害し、治療のために病院に通っていた。市によると、昨年12月7日、福祉事務所に「病気で働けない」と生活保護を申請。事務所からは「働けるが、手持ち金がなく、生活も窮迫している」と判断され、同月26日から生活保護を受けることになった。

 だが、今春、事務所が病気の調査をしたうえで男性と面談し、「そろそろ働いてはどうか」などと勧めた。これに対し男性は「では、働きます」と応じ、生活保護の辞退届を提出。この結果、受給は4月10日付で打ち切られた。この対応について男性は日記に「働けないのに働けと言われた」などと記していたという。

(中略)

小倉北区役所の常藤秀輝・保護1課長は「辞退届は本人が自発的に出したもの。男性は生活保護制度を活用して再出発したモデルケースで、対応に問題はなかったが、亡くなったことは非常に残念」と話している。

北九州市は、「歴史的経緯」から生活保護の申請が特に厳しいことで有名だ。ポストバブルの長期不況の中でも、政令指定都市の中で唯一、生活保護受給率が上昇するどころか下がり続けたと言われている。(これを確かめるには厚生労働省の「福祉行政報告例」あたりで毎年分をチェックする必要があるのだが、時間がないので、ソース元としてやや心もとないけど、以下の赤旗記事のグラフを参照。)

http://jcp-nihi.web.infoseek.co.jp/20060620kitakyukodokusi-2.html

ちゃんと自分で調べたい人はこちらでどうぞ
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/IPPAN/ippan/scm_o_NinshouNyuuryoku

この「歴史的経緯」についてはwikiの「生活保護」の「不正受給」の項目にも少し言及があるけれども、私も詳しい経緯はよく知らない。ただ、北部九州地域がもともと炭鉱地であったことと無縁ではないだろう。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E4%BF%9D%E8%AD%B7

生活保護というのは本当にややこしい。いろんなものが凝縮されている感じ。そして多くの人にはその実態がほとんど知られていない。私も、ケースワーカーの話や自治体の人の話を(ときに人づてに)聞いて、いろいろとビックリする。

世の中知らんことばかり。そして哀しいことばかり。合掌。