研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

現代思想2月号:特集ケアの未来メモ

現代思想2009年2月号 特集=ケアの未来 介護・労働・市場

現代思想2009年2月号 特集=ケアの未来 介護・労働・市場

とりあえず上野・立岩対談と市野川・杉田・堀田対談を飛ばし読み。

前者についてはいろいろな話がもりだくさんに。とても勉強になる部分もあれば、生煮えの詰め切れていない議論も多い。よくも悪くも対談形式ということだ。こっち↓も読んで、また考える。

ただし立岩先生の制度に関するコメントは誤解を招きそうなものがいくつかあるので指摘しておく。

まず、介護保険

「基本的には1人ひとり同じ額の保険料を足し合わせ、それにいくらか税金を加えた程度の予算」(P.73 立岩)

ということを2回ほど述べているが、第一号被保険者と第二号被保険者では保険料の額は異なるし、第一号の中でも第二号の中でも保険料は異なる。それらについて「基本的には同じ」というのは少なくとも間違っている。この事実誤認(?)で彼の主張の根拠が崩れるわけではないし、全体からすると瑣末な問題だけど。

また、地方分権についての記述も単純化しすぎだ。彼のあげている鷹巣町の事例も含めて、事態はもう少し複雑だろう。こっちは単なる編集の問題かもしれないが、どうもそうにも読めない。

これは介護保障の事務事業や地方財政計画・地方交付税・国庫補助金をどうするかという話なのだが、ここらへんは制度・政策議論の根幹の一つであるにもかかわらず、財政学者と行政学者以外の社会保障研究者にはわりと無視されるか、「国庫補助負担金か一般財源化か」以上の議論にならない部分なのではないかと思う。

深入りはせずに参考文献を。日本の介護については例えば二冊目の15章、星野菜穂子「高齢者保健福祉の財源保障」や3冊目の沼尾波子「自治体改革と介護保険」など。


Intergovernmental Fiscal Transfers: Principles and Practice (Public Sector Governance And Accountability)

Intergovernmental Fiscal Transfers: Principles and Practice (Public Sector Governance And Accountability)

ケアその思想と実践 〈5〉 ケアを支えるしくみ

ケアその思想と実践 〈5〉 ケアを支えるしくみ

市野川・杉田・堀田対談は、最近あんまり使っていない部分の脳みそを稼動させるとともに、普段自分が使っている脳みそ部分のくだらなさに辟易する。彼らの深い思索を受け止めながら、自分はもう少し表面的な部分で何を考えるか、ということだと思うことにした。