研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

メモ:障害者福祉関連の重要エントリ二つ

「翻弄」
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20090831

lessorさんの地域生活支援事業についてのエントリ。

介護保険ができるときに、「介護保険地方分権の試金石」などと言われながらも、結果的に中央集権的要素の強い制度となり、地方分権推進派からは批判の声が相次いだ。その意味で、「単価も資格要件もサービス内容も地域ごとに全てばらばら」(上記lessorエントリより)の地域生活支援事業は、介護保険における地域密着型サービスとともに、社会サービスに対する自治体の裁量・自由度が強まった時に、地域の状況(自治体の行財政運営、当事者団体やNPOの運動・活動の状況、地域の経済・所得・階層状況など)が社会サービス提供にどのような影響を与えるのかを検証する「地方分権の試金石」となっている。

そして、これはあらゆるタイプの「地方分権推進派」にとっても重要な試金石となるはずである。例えば、財政の問題だけに限定しても、地方交付税の財政調整機能に否定的な分権論者からすれば、(地方交付税による調整後に残る)現行の自治体間の財政力格差が自治体間の社会サービス提供格差に与える影響を推定することによって、地方交付税の機能を弱めてかつ自治体の裁量・自由度を高めたときに、どの程度、自治体間のサービス格差が拡大するか(しないか)を推計することができる。一方、地方交付税の財政調整機能に肯定的な分権論者からすれば、現行の地方交付税制度を維持しつつも社会サービスに対する自治体の裁量・自由度をさらに高めていった場合に、どの程度自治体間格差が存在するのか(しないのか)を推測するための検証材料となる。

だが、「単価も資格要件もサービス内容も地域ごとに全てばらばら」であり、データも収集困難であるがために、この種の検証は困難を極めるだろう。

参考
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb15GS60.nsf/vAdmPBigcategory50/473FCAFAD0996AAE4925740500212E00?OpenDocument

「自然死とされる作為的積極的尊厳死の実態」
http://d.hatena.ne.jp/ajisun/20090905
「不作為という作為、死を強制された患者」
http://d.hatena.ne.jp/ajisun/20090906

とくに追記することはないが、ajisunさんから下記の編著本を頂いたので紹介。一見実務的な本だが、立岩真也氏が寄稿していたり、コラムが充実しているので、ここらへん(ってどこらへん?)に興味のある人には幅広くお勧め。

在宅人工呼吸器ポケットマニュアル暮らしと支援の実際

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