研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

メモ:年金の持つ役割とこれからの課題『週刊年金実務』2009年1月5・12日合併号

年金の持つ役割とこれからの課題――いま、年金に期待されていること『週刊年金実務』2009年1月5・12日合併号(24MB)
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/IMG_0001.pdf

江口隆裕筑波大学教授・権丈善一慶応大学教授

PDFがむちゃくちゃ重いけれども、勉強になる。

「年金実務」という雑誌媒体であることもあって、専門的な話が続くが、ところどころにいつもの権丈節。

 大きな流れからみると、経済界や構造改革派の研究者が、未納未加入問題で年金は破綻しているという誤解に基づいて、もしくは国民の誤解を利用して年金抜本改革、基礎年金の租税方式化を主張してきた。年金破綻を防ぐために税方式化を言えば、ちゃんと保険料を支払っている国民の圧倒的多数を味方にできますからね。しかし、未納で年金は破綻しませんよということが証明されると、今度は彼ら経済界や構造改革派の研究者は、未納未加入の人を切り捨てるのかと、途端に低所得者を慮る心優しい人になって、やっぱり基礎年金の租税方式化論をなおも主張しつづけた。まあ、無年金・低年金問題をダイレクトに扱うのは、悪い流れではない。この問題を解決する手段を握っているのは彼ら経済界なのですけどね。

昨年2008年は、基礎年金の財政方式についてはプロの世界で決着がつき、経済界や構造改革派の研究者が言い続けてきた年金破綻論がウソであることも明らかになった年でした。これが、 一般市民のところに伝わっていって、年金に対する不信感というものが鎮まるかどうかですね。そこは、媒体としてのメディアの仕事に大きくかかつていると思います。そこがおかしければ、専門家と世論に距離があり続け、そして、民主主義の下での政治というのは世論のほうに従うしかないので、年金のまわりは不幸な状況、結果的に国民に不幸な状況が続いていくと思います。

5年後には、「素人」の世界でも決着がついているだろうか。たぶん5年後も私の年金の知識は大したことがない可能性が高いので、せめて状況証拠から、決着が着いたかどうかの判断ができるくらい「素人」界での議論が進んでいることを望む。