研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

メモ:産経新聞【静かな有事】第4部 少子化を止めろ+【少子化連続インタビュー】

たまたま見つけたのでメモ。インタビューの選出はなかなか手堅い印象だけど、駒崎さんのように、もっと若い世代の事業者や論客にもインタビューすればよかったのに。

【静かな有事】第4部 少子化を止めろ
(1) 子ども手当「人口」と無縁
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/100501/wlf1005012313000-n1.htm
(2) 出産後の「働きがい」がカギ
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100503/trd1005030740002-n1.htm
(3) 保育環境整備、待ったなし
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100508/plc1005080849008-n4.htm
(4) 不安定雇用の若者支援を急げ
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100507/plc1005070045000-n3.htm
(5) 危機感の共有こそ解決の近道
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100508/plc1005080031001-n1.htm

少子化連続インタビュー】
(1)小宮山宏三菱総合研究所理事長 「政府が悪くても幸せになれる」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100522/plc1005220701003-n1.htm
(2・上) 佐藤博樹・東大教授 結婚取り巻く環境変わった
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100523/plc1005230700003-n1.htm
(2・下) 佐藤博樹・東大教授 雇用の安定へ有期契約の正社員を
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100523/plc1005230701004-n1.htm
(3・上)増田雅暢・元上智大教授 子ども手当は子供多い人に効果
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100529/plc1005290648011-n1.htm
(3・中)増田雅暢・元上智大教授 「家族」をしっかりさせるべきだ
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100529/plc1005290649012-n1.htm
(3・下)増田雅暢・元上智大教授 育休取得アップへ給与の8割補償を
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100529/plc1005290651013-n1.htm
(4・上)松田茂樹第一生命経済研究所主任研究員 「少子化要因の7割は未婚化だ」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100530/plc1005300701002-n1.htm
(4・下)松田茂樹第一生命経済研究所主任研究員 「明確な出生率の目標値を」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100530/plc1005300701003-n1.htm
(5・上)駒村康平・慶大教授 団塊ジュニアを見送れば日本は再生不能
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100605/plc1006050700009-n1.htm
(5・下)駒村康平・慶大教授 少子化危機の「見える化」が必要
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100605/plc1006050702010-n1.htm
(6)池本美香・日本総研主任研究員 子供の視点が欠けている
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100606/plc1006060701009-n1.htm
(7)奥山千鶴子・子育てひろば全国連絡協理事長 NPOは地域に応じたサービス可能
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100612/plc1006120700003-n1.htm
(8)宮本太郎・北大教授 少子化対応は保守、リベラルの枠超えて
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100613/plc1006130701004-n1.htm

ざっとみたところ、基本的にどれも面白く、視点も多岐に渡るようだが、特に駒村氏と宮本氏のインタビューが印象に残った。いくつか抜粋。

駒村氏のインタビューより

「平成16年の年金改革でも、小泉純一郎首相は『マクロ経済スライドなんて知らない』といっていたが、わかりやすくいえば『子供の数や成長率に連動して年金が減る』と説明すればよかった。オブラートにくるんだような不透明な説明をするのではなくて、『子供数連動年金』といった方が、高齢者も『そうなのか』と納得するだろう」

年金水準は経済成長とも連動しているので(もちろん社会保障財政全般が経済成長と連動しているはずだが、年金は仕組み的に明示的に経済成長と連関している)、「子供数・経済成長連動年金」とすれば、少子化のみならず、マクロ経済政策への国民の関心もぐっとあがるかも。関心もたれればもたれるほど日銀や政府のマクロ経済運営がよくなるかどうかはわからないが。

−−地方分権の中で少子化対策財源はどうあるべき
 「今までのようなひも付き補助金ではなく、連合や私は『基金』と呼んでいるが、具体的な使途は決まっていないが、子供向け施策に使ってもらうという“色”は付いているお金を基金なり、特別会計から地方に渡す。子供政策は基本的には国全体で考えるべき部分がかなりある。長期の国の在り方を決める問題だから、自治体が『うちの地域は高齢者が多くなって、保育サービスはいらないが、介護サービスはほしいから、保育所はつくらない』というような判断をされたら困る」

(中略)
−−少子化対策は地方任せではいけない
 「分権化すればするほど合理的な判断ができるというのは夢の話で、やはりある程度のフレームは国がつくらなければならない。ただ、どういうサービスをどの程度行うか、色がある財源の中でどう配分するかは自治体にお任せすればいい。無条件の地方分権には反対だが、今までのひも付き補助金でも駄目なので、そういう意味で子供向け施策に限定した『色付き』の財源をつくるべきだ」

やさしい言葉で喋っているが、行政用語に逆翻訳するなら、保育財源の国庫補助負担金の無条件の一般財源化には反対だが、交付金化やブロック補助金化ならOKということか。

宮本氏のインタビューより

−−少子化政策も与野党で共有すべきか
 「やはり家族は大切。北欧だって決して家族を壊したわけではない。むしろ国際的な世論調査でみると、家族が人生の中で一番大事と答えている人の割合は非常に高い。やはり北欧はものすごく家族志向が強い。でも、相変わらず日本では『福祉国家だと高齢者の自殺数が多い』とかいう話が先に立ってしまう。だが、それは事実と違って、70歳以上だと日本の方が10%くらい多い。そういう意味で公共の手段を用いることは決して家族の解体ではない」
 −−与野党では考え方に隔たりもある
 「家族観の違いというのはどこかで出てくると思う。でも今の議論の在り方は過度に情緒的なものになってしまっていて、実態としてはそう家族観が違うわけではない。むしろ、強い男がちゃんと居座っていると家族が安泰だというような見方の方が、家族が続いていくときに大丈夫かなというところがある。そこはそれなりに公共のサポートが入っていって初めて国民が大事に思っている家族というものが保持されているのだと思う」

産経新聞でこのことをはっきりいうことの意義は大きい。と信じたい。

あと、昔から気になっているのだが、日本では子供が小さいときの費用や保育サービスの不備だけではなく、高等教育にかかる費用(塾や大学)が少子化の一因になっているということはないのだろうか。特に塾が普及している都市部では。そこらへんへの言及は(ざっと見た限りでは)なかった気がする。

いずれリンク切れするだろうが、インタビューの分割が細かくてevernoteにメモする気になれない。しかもこういう特集もニュース扱いだからか、系統だってリンクが整理されておらず、全部のリンクを探すのが面倒くさい。タダで読めるだけよいか。