研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

沖縄県竹富町の地方交付税急減・急増の意外な理由

ちょっとした小ネタ。自治体パネルデータをチェックしていて、沖縄県竹富町地方交付税が2002年に急減、その後急増しており、元データを見たところ、集計ミスではなく、基準財政収入額が実際に2002年に急増し、その後また急減していることが判明。その結果、財政力指数(単年度)は、2001年度の0.135、2002年度0.566、2003年度0.200、2004年度0.214と2002年度に急増、その後急減している。

なぜだろうとググってみると、こんな記事が。

24市町村で予算割れ/02年度市町村普通交付税額 2002年7月27日(琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-101943-storytopic-86.html

当初予算割れを起こした24団体のうち、交付額が対前年度比54・3%減の竹富町は「住民税(高橋氏)の増で自主財源が増えたため交付額が減った」と要因を説明。

高橋氏って誰だ、なんで名前書いてあるんだと思い、記事の上のほうを読み返してみると

基準財政収入額は、全国の市町村で軒並み減少したが、沖縄では高額納税者(高橋洋二ユニマットグループ代表)の住民税や、那覇新都心地区など大型店舗や住宅新築による固定資産税増の影響を受け、収入額が1022億3000万円と対前年度比2・4%増。

と書いてある。で、この高橋洋二氏について調べてみると、平成13年の高額納税者(所得税)1位で、68億4115万円の所得税を支払ったという。

http://www.lotus21.co.jp/data/news/0205/news020517_01.html

住民税は一年前の所得に応じて払うので、竹富町の平成14年度の基準財政収入額の大幅増および地方交付税の大幅減が彼の地方所得税の納税であるによるものであることはほぼ間違いないだろう。

ところでこの高橋氏、いろいろと話題に事欠かない人物のようだ。

http://goyacha2006.ti-da.net/e1618117.html
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/2032/saibankiroku_top.htm
http://blog.goo.ne.jp/go2c/e/f0799b99aaad7ae29ccb4ceee8a0a75e
http://www.cosmos.ne.jp/~miyako-m/htm/news/050517.htm

上記リンクの最後の2つの記事によると高橋氏は平成16年(2004年)12月には竹富町を転出し、04年は沖縄県上野村高額納税者所得税)として取り上げられている(5億233万6千円)。ということは、少なくとも2003年度、2004年度の竹富町の基準財政収入額には彼の地方住民税はカウントされているはずだ(住民税は原則的にその年の1月1日に住民票がある市町村に対して、前年度の所得をベースに支払う)。また、常に高額納税者であるとはいえ、2001年の68億円に対して2004年の5億円と、所得税は2001年に突出していたことが伺われ、2004年度まで高橋氏が竹富町に地方住民税を納税していたにも係らず、2002年度だけとくに基準財政収入額が突出していることも納得がいく。

別に高橋氏について調べたかったわけではなく、竹富の地方交付税が特異な動きをしている合理的な理由があるかをチェックしたかっただけなのだが、やや興味深いケースだったのでブログにメモ。ちなみに、自治体の基準財政収入額の大きな変動およびそれによる地方交付税の大きな変動はたまに見られるが、固定資産税など企業関連の税収が理由であることのほうが多く、住民税が原因でこんなに地方交付税が変動するのは珍しいのではないか。とくにこの年の2001-2002年にかけての竹富町の住民一人当たり交付税の減少、2002年から2003年にかけての住民一人当たり交付税の増加は突出しており、まさか個人の転入・転出が要因とは思わなかった。