研究メモ ver.2

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20111004第6回社会保障審議会生活保護基準部会資料

第6回社会保障審議会生活保護基準部会資料
平成23年10月4日(火)
15:00〜17:00

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001qjkb.html

主観的最低生活費の測定
山田篤裕(慶應義塾大学経済学部) ※報告者
四方理人(関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構)
田中聡一郎(立教大学経済学部)
駒村康平(慶應義塾大学経済学部)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001qjkb-att/2r9852000001qjos.pdf

※ 本研究は、厚生労働科学研究費補助金(政策科学推進研究事業)を受けた『低所得者
生活困窮者の実態把握及び支援策の在り方に対する調査研究(平成22年度・研究代表者:
駒村康平)』の一環として実施された。

測定の意義
 相対的貧困
◦ 中位等価可処分所得の50%に設定
◦ 国際比較に便利
生活保護基準に基づく測定結果と似ている
◦ ただし背後にある生活費の裏付け?
 最低生活費へのアプローチ
◦ 裏付けをもった基準は多様
 理論的生活費(マーケット・バスケット)
 実態家計(家計調査、家計簿)
 市民参加型(仮想的家計)
 その他

結論
 質問方法の違いによる最低生活費の幅は一定の範囲に収まっ
ている
◦ 最低生活費について両極端の尋ね方による幅(世帯構成によって
異なるが)は一定の範囲
◦ 月間必要消費項目の中央値:T調査=K調査×1.2〜1.3倍
◦ 年間必要消費項目の中央値:T調査=K調査×1.2〜1.9倍
 単身世帯以外の主観的最低生活費の水準
◦ K調査<保護基準<T調査
◦ 単身世帯の生活保護基準は相対的に低い(K調査より低い)
 主観的最低生活費の特徴(保護基準との比較)
◦ 第1類関連消費:20歳未満の世帯員について相対的に低く見積も
る傾向
◦ 第2類関連消費:相対的に高く見積もる傾向
◦ 世帯に働く規模の経済性を相対的に高く見積もる傾向

この慶応グループは、数年前からこういう研究をこつこつ続けている。日本では手薄な、経済学と社会政策学が交錯するポイントでの研究テーマであり、今後の展開に期待。

「被保護母子世帯における貧困の世代間連鎖と生活上の問題」
駒 村 康 平
道 中   隆
丸 山   桂
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001qjkb-att/2r9852000001qjp1.pdf

要   旨
本稿では,X 市の個票データを使い,生活保護被保護母子世帯の持つハンディや生活保護受給期
間や就業を規定する要因について数量的に分析した。分析の結果,?母親の 3 割以上が,成育期に
生活保護を経験しており,高卒未満という学歴や 10 代出産など,成育期に発生した事柄が現在の生
活の負荷になっていること,?就労阻害要因には,母親の健康状態と学歴があること,? DV,児
童虐待,母子の健康状態の悪化など,家族内のハンディが累積・集中していることが確認できた。
キーワード
生活保護,貧困の世代間連鎖,10 代の出産経験,児童虐待,D

生活扶助基準の設計について
標準世帯と世帯規模の考慮を中心に
慶応義塾大学
駒村康平
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001qjkb-att/2r9852000001qjsb.pdf

参考文献

  • Atkinson, A. B., L. Rainwater and T. M. Smeeding (1995), “Income distribution in OECD

countries: Evidence from the Luxembourg Income Study”, OECD Social Policy Studies
No. 18, Paris

  • Buhmann, Brigitte, L. Rainwater, G. Schmaus, T. M. Smeeding (1988) “Equivalence

Scales, Well-being, Inequality, and Poverty: Sensitivity Estimates Across Ten Countries
Using the Luxemburg Income Study(LIS) Database, The Review of Income and Wealth,
vol.34, No.2, pp.115-142

  • Kuivalainen, Susan (2004) A Comparative Study on Last Resort Social Assistance

Schemes in Six European Countries. Research Report 146. Stakes, Gummerus,
Saarijärvi

  • 山田篤裕、四方理人、田中聡一郎、駒村康平(2010) 「貧困基準の重なり―OECD

対的貧困基準と生活保護基準の重なりと等価尺度の問題―」『貧困研究』第4巻,
pp.55-66

  • 渡辺久里子(2010)「生活扶助基準における「世帯規模の経済性」の検討」駒村康平

編『最低所得保障』岩波書店

  • 渡辺久里子(2011)「等価尺度の推計と比較‐全国消費実態調査と生活扶助基準から

‐」『低所得者、生活困窮者の実態把握及び支援策の在り方に対する調査研究』平
成22年度 厚生労働科学研究費報告書(研究代表者 駒村康平)