研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

2011年9月16日 第45回社会保障審議会医療保険部会議事録

2011年9月16日 第45回社会保障審議会医療保険部会議事録
平成23年9月16日(木)9:57〜12:24
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001qt3n.html

資料はこちら。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001o3n6.html
議事次第
議事次第(PDF:75KB)

委員名簿
委員名簿(PDF:36KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001o3n6-att/2r9852000001otc3.pdf
座席図
座席図(PDF:14KB)

議題1について
資料1 次期診療報酬改定の基本方針の検討について(PDF:141KB)
資料2 過去の診療報酬改定の基本方針における視点等(PDF:118KB)
資料3 平成22年度診療報酬改定の基本方針(PDF:289KB)
資料4 平成22年度診療報酬改定の基本方針への対応状況について(PDF:213KB)
資料5−1 次期診療報酬改定の基本方針の検討について (参考資料)_Part1(PDF:997KB)
資料5−1 次期診療報酬改定の基本方針の検討について (参考資料)_Part2(PDF:942KB)
資料5−1 次期診療報酬改定の基本方針の検討について (参考資料)(PDF:1937KB)
資料5−2 被災地の医療機関等に対する診療報酬上の緩和措置について(PDF:405KB)
資料6 社会保障審議会医療保険部会(平成23年7月21日)における各委員の発言要旨(PDF:187KB)

議題2について
資料7 社会保障・税一体改革成案における高額療養費の見直し等のセーフティーネット機能の強化、給付の重点化関係(PDF)

せっかくなので経済学者の岩本先生の発言からのやりとりをコピペ。

○岩本委員(東京大学大学院経済学研究科教授) お話の筋立てが高額療養費を見直すということで財源が必要であって、公費も充てられない、保険料も充てられないということで定額自己負担に求めるということなんですけれども、私が全く私的な立場から一生活者としてこの話を見た場合、高額療養費を使って生活が苦しくなる可能性もあるとして、その分負担が下がるということで恩恵を被るということであれば、なにがしかの負担を自分としてはしなければいけません。その場合だったら保険料を上げてくれるのが一番いいなと思います。そうすることによって、国民全体でその部分を分かち合うということで負担をするということになるわけです。
 定額の自己負担はどういうことかというと、医療機関にかかった人だけでその際負担する。たくさん通った人はたくさん負担するという形の負担になるわけなので、そういう形のやり方よりは、どれぐらいの医療費使うかわからないという段階で、そういった病気の度合いとかによらない形で負担が決まっている方がもっと負担がしやすいのではないかというのが個人的な意見です。経済学者としてもそういうふうに考える次第です。ですから、最初に保険料の負担ができないという前提で話が始まっているところはそうなのかなという気がいたします。
 この制度自体は免責制と違うんだとおっしゃっておりますけれども、その負担の金額から見れば事実上、免責制と同じ形をしておりまして、計算しますと約143円の免責制のような形になっています。最初の143円が保険給付の対象から外れて、それ以降3割負担という形と同じ金額を負担する形になるんだと思います。
 免責制の議論は昔からありまして、私も財政を研究している過程でいろいろそれについて研究していたんですけれども、これは医療費の財源調達する最後の手段であると認識しております。これは最初のところで受診抑制が働くということはありますので、軽々と使うべきものではないと思っております。
 保険料でみんなが払えるという状態であれば、その方が医療費の財源調達としては合理的な手段であると考えております。現状ではなかなか保険料も上がってきて苦しい状態ではありますけれども、まだこの程度の規模であれば国民に十分に理解を求めれば払える。保険料を上げて払うということで理解を得られるのではないかなと思っておりますので、現段階ではこういう形で高額療養費の見直し、財源を求めるのではなくて、きちんと説明をしていって保険料によって財源を調達するのがいいのではないかなというのが私の考えでございます。

○白川委員(健康保険組合連合会専務理事) 岩本委員の御意見は、全体としてはそういうお考えもあるかと理解はできるのですが、2つ問題があります。
 1つは、個々の保険者によって高額医療の発生額が違う。一番いい例が国保の方に低所得者の方が多いですから、そちらへの保険料負担はかなり大きなものになるだろう。健康保険組合は、例えば300万円以下の層というのはそんなにおりませんので、負担は余り大きくない。そういった問題が1つあるということ。
 もう一つは、これは保険料の問題だけではなくて税財源も絡む話。当然のことながら、高額療養費の4分の1ぐらいの額は国あるいは公費で負担をしておりますので、それの問題もあると私は考えております。
 この件について、前回、昨年の10月、12月ぐらいに議論したときも保険者の方からは財政中立にしてくれという意見、私も含めて多くの保険者がそういう御意見だったと思います。これはいろいろな意味があるんですけれども、全体としての財政中立という話と各保険者グループといいますか、国保とか協会けんぽとか健保組合で個々に財政中立をしてくれという話と両方あるかと思います。
 なぜそういう言い方をするかといいますと、先ほど申し上げたとおり、もしも国保が財政負担が大きいので、被用者保険の方からその分は補てんしますかと、これは財政調整ということになるので、単に高額療養費のお金のやりとりで済まない。
 我々が保険料を上げるとか上げないとかいう議論の前に気にしておりますのは、当然のことながら、今、保険集団で徴収しております保険料のうちの半分近くを高額療養費に拠出をしている。高齢者に財政調整しているという現状で、更に高額療養について財政調整をまたやるのか。それは我々として事業主なり加入者の方になかなか説明がつかないということを懸念して、財政中立をしていただきたいというお願いをしているということです。
 若干、去年の議論の繰り返しになりますけれども、整理して私どもの考え方を御説明いたしました。

○遠藤部会長(学習院大学経済学部教授) 1つ質問ですが、そうしますと各保険グループ間で財政中立を維持するということは、高額療養費の上限基準が各保険グループによって異なってくるということを意味すると理解いたしますけれども、そういうことでよろしいんですか。
○白川委員 いえいえ。私が申し上げたのは、去年の財政中立の議論のときはそういう考え方の意見があったと申し上げているだけで、今回の制度について各制度ごとに定額負担の額を変えるなどということは全然言っているつもりはございません。
 申し上げたかったのは、例えば100円ということにして高額療養費の発生状況あるいは所得分布を見て、各制度ごとにバランスはとれるんだろうかという観点での検討はこれから必要ですねということを申し上げているだけでございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
 小林委員、どうぞ。

○小林委員(全国健康保険協会理事長) 岩本委員のお話について、先ほど申し上げましたように、私ども協会けんぽで申し上げますと、財政的に赤字構造と申し上げたのは、1人当たりの医療費は右肩上がりで上がっている一方、保険料のベースになる標準報酬月額は横ばいないしは減っており、常に赤字の構造にあるということであります。
 したがって、現在累積赤字を抱えていて、金融機関から借入れをしながら医療費を払っているという状況になっており、先ほど保険課長からお話がありましたように、資料7の4ページの通り、保険料率は21年度は8.2%、22年度は9.34%、23年度は9.5%と急激に上がっております。。来年度、24年度は10%を超える懸念があります。高額療養費の見直しがなくても、保険料は上がっていく構造になっているわけです。
 制度の見直しの議論に当たっては、給付と負担の関係が常にセットで考えられなければいけないと思います。保険料収入だけではこれを負担し切れません。先ほど申し上げたように、私どもの加入者は中小零細企業であり、保険料は勿論、事業主と加入者が半分ずつ負担しますが、新たな負担は耐えられない状況にあります。制度の見直しを考えるときには負担とセットで考えていく必要があり、こういう考え方もあり得るのかなと思います。保険料率はこれ以上、上げる状況にないというのが私どもの意見でございます。
○岩本委員 負担とセットで私は考えていて、負担の仕方として並べた場合にどちらが適切かという判断で申し上げた次第です。その段階で保険料の方が私としては納得しやすいという意味です。
 勿論、苦しくて保険料がこれ以上払えないという人がいるかもしれませんが、けれども、その人にもこの制度では負担を求めるわけです。しかも、その求め方が病気になって医療機関に行ったときにお金を払ってもらいますという仕組みになっているわけですから、それよりは苦しくても何とか元気に働いているところでみんなで分かち合って、その場合の負担というのは、窓口で定額負担する分よりも少し安くなると思うんですけれども、それを負担するということに納得する人も出てくるのではないかなというのが私が申し上げたことです。