研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

学問

理論家の言うことはかっこいい

自分の場合、マルクス主義的な規範理論の現代的発展系は、アマルティア・センなどの非厚生主義的規範理論に見出すことが出来ると考えてきている。特にセン、コーエン、ヴァン・パレースなどの議論は、マルクスの古典に若くから慣れ親しんできた自分にとって…

「生を無条件に肯定する」をめぐるコメント欄での議論2

『 留保のない生を肯定するか、さもなければ』 http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20060123/p1#c1138334516ちょっと前のだが、コメント欄でのmojimojiさんと稲葉さんのやりとりが面白い。 チェックしてなかったので気付かなかった。関連項目: 『「生を無条件…

「生を無条件に肯定する」をめぐるコメント欄での議論

私の冗長なコメントはともかく、興味深いやり取りが。 http://d.hatena.ne.jp/ajisun/20060129

スティグリッツのフェアトレード論

これは(いつか)読まねば。すぐ和訳がでそうな気もするけど。『Joseph E. Stiglitz=Andrew Charlton, 'Fair Trade for All: How Trade Can Promote Development'』(梶ピエールのカリフォルニア日記。)より http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20060113#p1 なぜ…

大日康史氏の研究に関する補足

ちなみに大日康史氏は、介護サービス需要の価格弾力性や所得弾力性の推定といった研究をしているが、この種のミクロ計量分析は重要だと思う。自立支援法で障害者にも一割の応益負担が導入されようとしている今、自己負担の増大によって介護サービス需要がど…

在宅介護と施設介護の費用便益分析?

前に、在宅介護と施設介護に関してこんな文章を紹介した。 施設ケアからコミュニティ・ケアに切り替えても大きなコストの節約にはならないことを研究結果は示している。その理由として、在宅サービスの需要はきわめて価値弾力的であること、介護のコストは介…

クリスマス・イブに

彼女はサービス業で働いているため、(サービス業を除く)一般人が遊べる時期ほど忙しい。今日も仕事。自分も何年か前に居酒屋で働いていたけど、年末はダルかったなぁ。三ヶ月半で辞めたけど。というわけで、家で待機中。暇つぶしに何か書こうと思う。きっ…

面白いなぁ

『丸激本の第三弾(IT篇)が間もなく春秋社から出版されます。』 http://www.miyadai.com/index.php?itemid=321 因みにハーバーマスを理解するには、「〈生活世界〉の重視─軽視」という第一軸と、「伝統や共同性の重視─軽視」という第二軸を、掛け合わせた…

むやみに経済学を批判してはいけない。

本田由紀さんが、ブログのコメント欄で経済学にけんかを売っている。http://d.hatena.ne.jp/yukihonda/20051206残念ながら、完敗である。経済学を甘く見すぎている。稲葉さんや田中さんが一生懸命啓蒙しようとしている「モデル」の意味については何も言うこ…

他ブログでのコメント(追加あり)

稲葉さんのブログとかでいろいろとコメント書いたのでメモ。しかし現実の(紙媒体の)言論界で活躍している人たちがあんなにブログのコメント欄に集まって盛り上がってるの初めてみた。 http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20051111 http://d.hatena.ne.…

mojimojiさんの議論を読んで 

1.『障害者自立支援法について反論する』を読んで『障害者自立支援法について反論する』(モジモジ君の日記。みたいな。) http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20051115 を読んだ。 長時間介護が必要な人たちのために、一体どれほど金がかかるのか。自立支援法…

『税のはなしをしよう。』をネタに社会保障と財政について考える。

財務省主税局が定期的に出しているパンフレット『税のはなしをしよう。』の新しいバージョンが10月に出ていた。 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/pn01.htm*ちなみに、財政全体についてのパンフレット『日本の財政を考える』 http://www.mof.go.jp/jouho…

階層・階級・ニート・フリーター・下流・B層・・・・・・

三浦展の『下流社会 新たな階層集団の出現』が売れているらしく、一部ブログでも話題になっている。『「下流生活者」たち』(内田樹の研究室) http://blog.tatsuru.com/archives/001341.php『格差バブルと下層の論理』(Soul for Soul) http://www.asvattha…

介護保険の包括払いについて

『3大サービス重点的に見直し 包括払いの導入求める 社保審介護予防WT 中間報告まとめ』 http://www.wam.go.jp/wamappl/bb01News.nsf/vCat10/12C467F896EEF94B49257073000D0782?OpenDocument 細かい制度の話にはついていけないのだが、包括払いについてち…

「高齢者」の社会的構築と公共政策 

10月4日の日本経済新聞の『経済教室』において、神戸大の小塩教授が次のような論を述べている。以下は要約の部分。 人口減少社会において社会保障給付の充実は現役層の負担増さらには将来世代への負担先送りにつながりやすく、その吸収は困難になる。日本に…

『「資本」論』に対する素朴な疑問 

稲葉振一郎氏の『「資本」論』に対して、杉田氏が非常に辛辣な批評を書いている。 『稲葉振一郎『「資本」論』は、恥知らずだと思う。(9月14日)』 『「資本」論』論(1)(9月17日)』 http://d.hatena.ne.jp/sugitasyunsuke/20050923 「資本」論―取…

紹介+雑感 吉原直毅『マルクス主義と規範理論』

吉原直毅『マルクス主義と規範理論』 http://www.ier.hit-u.ac.jp/~yosihara/marukusutokihan3.pdf密度の濃い、勉強になる論文である。こういうの読むと、やっぱり数理経済学をバリバリやったほうがクリアにいろんな考察ができるんじゃないかな、と思ったり…

伊藤周平(1996)『福祉国家と市民権 法社会学的アプローチ』についてのメモ 

伊藤周平(1996)『福祉国家と市民権 法社会学的アプローチ』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4588600257/qid%3D1120155893/249-5341350-5536341 介護保険への痛烈な批判者であり、最近は介護保険と支援費の統合問題についても活発に発言している…

金子勝の『市場と制度の政治経済学』についてのらくがき(追記あり)

ちょっと所有権と社会保障について勉強しようと、金子勝の『市場と制度の政治経済学』をぱらりぱらり読み返してみる。とはいっても、前回読んだときは予備知識がなくて理解できないところが多かったのだけれども。今回もそうだけど。

ゲーリー・ベッカー来校

2,3年前に、人的資本理論で有名なノーベル賞経済学者のゲーリー・ベッカーが一橋大学に来て講演した。どんな内容かあまり覚えていないが、一つ鮮烈に記憶に残ったグラフがあった。私の記憶が確かならば、それは縦軸が平均寿命、横軸が年の時系列グラフであっ…

優生学と財政学

米本・松原・ぬで島・市野川著『優生学と人間社会』(isbn:4061495119)をぱらりぱらりとめくってて、障害者団体から強い抗議を受けた渡部昇一氏のエッセイ「神聖な義務」(『週刊文春』1980年10月2日号)への言及を見つけた。 このエッセイで渡部氏は、…

反資本主義運動と情報の非対称性

上の文章を少し中和しよ。フェアトレード・反ナイキ運動・反スタバ運動など、新しい消費者運動がさかんになってきたと言われる。これらの運動は、よく反資本主義運動と思われているが、私はそうは思わない。というのも、これらの運動の目指すところは、少な…

所有(権)に関する妄想メモ

『福祉国家におけるシティズンシップのあり方についてのメモ』 http://d.hatena.ne.jp/TamuraTetsuki/20050425#p1 ・ベーシックインカムの下でのシティズンシップ→就労もケア提供も与件としない、という意味で20世紀のあらゆる福祉国家におけるシティズン…

物象化論

いまさらだが、資本論を(例の新約で)読み始めた。で、第一巻第一章第四節の物象化論。なんとも大変なので、廣松渉なども読んでみる。これは踏み入れたら最後、抜け出せない世界か?資本論以外のマルクスの主要作品はだいたい一読したし、資本論の解説本な…

政策大学院と官僚制と福祉

前回、「政策エリートについて」 http://d.hatena.ne.jp/dojin/20050411 において、主にイギリス系の社会政策学や障害者運動(及び障害学)などを念頭において、なんで「生活と政策を繋ぐ」学問がうちの政策大学院にはないんだろうとぼやいていたわけだが、…

メモ:需要サイドからニートを考える人たち

1.「バーナンキ提案を振り返るⅠ&ニート雑文&パク・ソルミ」 http://reflation.bblog.jp/entry/164090/ わたしはこのようなニートの存在は、玄田氏のいうほど日本の若者の気質が変化したり、労働市場の構造変化のせいだとは思ってはいない。明らかなのは、ニ…

「内田樹の研究室」からのメモ1

「階層化=大衆社会の到来」 http://blog.tatsuru.com/archives/000880.php 「現在の享楽を志向し、学校を通した成功物語を否定する-すなわち業績主義的価値観から離脱することが社会階層の相対的に低い生徒たちにとっては〈自信〉を高めることにつながるの…

経済学者に関するメモ 

先日大学の卒業式があって、卒業証書とともに経済学部/経済学研究科のパンフを貰った。その中に、佐藤主光という若手の公共経済学者の「経済学で考える」という文章があった。私はあまり熱心な経済学徒ではなかったが、彼の授業は面白かった。「公共経済学」…

哲学

大学で分析哲学を学んだというカナダ人の友人に、哲学を学ぼうと思い、今日は第一回。クワインのTwo Dogmas of Empiricismという分析哲学では重要らしい文献を読んで講義?に望む予定だったが、難しすぎるし、あまり興味もわかないので、とりあえず断念。こ…

富永健一(2001)『社会変動の中の福祉国家 家族の失敗と国家の新しい機能』(isbn:4121016009)その一

1、理論的問題 第一章・第二章と第三章・第四章の断絶をどう考えるか。この著作は、少し奇妙な構成になっている。第一章「理論的前提――近代産業社会の構造と機能」で、「現代の福祉国家は『解体しつつある家族の中に国家が入っていく制度』として理解される…