研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

中日新聞:「藤沢で『介護疲れ殺人』悲劇また…今月3件目」

ついにわが地元藤沢でも。それにしても、この種の事件は、報道だけでは殺害にまで至った経緯がよくわからないなぁ。誰かルポでも書いてくれないかしら。

中日新聞:「藤沢で『介護疲れ殺人』悲劇また…今月3件目」(chunichi web pressより)

http://www.chunichi.co.jp/00/kgw/20060816/lcl_____kgw_____000.shtml

「介護に疲れた。妻を殺し、自分も死のうと思った」−。藤沢市長後で十四日起きた殺人事件で、殺人未遂の現行犯で逮捕された山口清容疑者(73)は、県警の調べに、こう供述したという。「介護疲れ」によるとみられる事件は今月、県内で三件目となった。県や社会福祉協議会は「家庭内での複雑な要因が絡み、対策は難しい」と“特効薬”を見いだせずにいる。悲劇を防ぐ手だてはないのか。 (石川智規、中沢穣)

 藤沢北署の調べでは、山口容疑者は、殺害した妻の系子さん(73)と二人暮らし。系子さんは五年前に心臓を手術し、二年前からほぼ寝たきりだった。週二回、ヘルパーを頼んでいたが、介護や家事は山口容疑者がほぼ一人でこなしていた。

 系子さんは一週間前から体調を崩し「殺してほしい」と漏らしていたといい、十四日早朝もそう訴えたとされる。山口容疑者はバットで系子さんの頭を殴った後、ノミで胸を刺した。系子さんは病院に運ばれ、死亡が確認された。

 同署は容疑を殺人未遂から殺人へと切り替えて調べる方針だ。

 近くに住む六十代の女性は「昔は二人でよく散歩していた。仲は良かったと思う」と振り返る。近くの自営業男性(59)は「(山口容疑者は)大工さんで職人かたぎ。口数が少なく、悩みを打ち明ける人ではなかった。愚痴の一つもこぼしてくれたら、何か手を貸せたかもしれない」と悔やむ。

 数日前には同容疑者が放心したように自宅の庭に立ち、「なんでこんな苦労をしないといけないんだろう」とつぶやくのを近所の人が聞いていた。

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 厚生労働省研究班が昨年六月、民間の在宅介護を利用する家族を対象に行った調査からは、家族介護の深刻な実態が浮かび上がる。

 介護者が六十五歳以上の「老老介護」では、介護者の三割以上が「死にたいと思ったことがある」と回答。さらに高齢者を介護する家族の四人に一人が軽度のうつ状態だったという。

 県内では五日に横浜市神奈川区認知症の父親(72)を殺害した容疑で、無職の三男(35)が逮捕された。七日にも同市金沢区で寝たきりの母親(84)とパーキンソン症候群の弟(55)を介護していた会社員男(57)が、弟を殴って死亡させる傷害致死事件が起きている。

 要介護者を抱える家庭への支援策について、県社会福祉協議会は「悩みの相談があれば、民生委員を定期的に家庭を訪問させ話を聞くことで、ストレスを緩和したり、ケアマネジャーを紹介することができる。ただ、相談の有無は地域差がある」と話す。

 県高齢福祉課は「介護者の負担を地域でいかに分散するかが重要だが、介護疲れによる殺人となると対策は難しい。ストレートに『殺人予防』を掲げるわけにもいかない。介護の悩みを少しでも減らすしかない」としている。