「大きな政府」なら「逆進課税」、「小さな政府」なら「累進課税」というビジョンになる?「大きな政府」派の主張。(上記エントリの続き)
上記エントリのトラバ先でも論じられていた権丈氏の「歳出削減はいつまでつづくのか?」のエッセイ
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare46.pdf
の中で紹介されている「消費税を社会保障目的税とすれば、消費税は累進税となる」(出典は権丈(2001)『再分配政策の政治経済学Ⅱ』)の部分はわかりやすい。
税負担だけでなく社会保障給付の再分配効果まで考えれば、消費税の逆進性は緩和/相殺されるという議論は北欧研究者などによって指摘されてきたが、日本ではあまり一般的な議論ではない。さらに、権丈氏の提示している簡単なモデルでは、「累進的な社会保障給付」(所得が高くなるにつれて得られる社会保障給付が減少する)ではなく、「所得水準に関係ない1人あたりGの一括社会保障給付」でも消費税の効果が累進的になり得ることを示している。その点で、以下のような論を理論的に補強している。ただし、一つ目の引用文は消費税ではなくて地方所得税との関係で所得移転(or社会保障給付)を論じている。
このように、移転所得における累進性は、子どものいる家族において大きく、三つの移転給付の中で児童手当が最も高い累進性をもつ。累進性は、通常、所得税などの税制において使われることばである。所得が上がるにつれて税率負担が上がることを指すが、スウェーデンでは、移転所得を考慮して累進性を考察する必要がある。なぜなら、地方所得税は比例税であるからである。移転所得における累進性とは、所得階層が上がるにつれて移転給付が少なくなることを意味する。税金の支払いと移転所得とを合わせて、所得再分配効果が明らかになる。
藤岡純一(2001)『分権型福祉社会 スウェーデンの財政』p140
スウェーデンとアメリカはどこが違うかというと、スウェーデンの方が、すべての所得階層において租税負担が高いんです。それはなぜか。スウェーデンは税金の半分を戻すんです。たとえば、子どもの「医」と「食」は児童手当で面倒を見ますし、「教育」も無料。三人目からは「多子手当て」がつく。だから三人子どもがいればどうにか生きていけるんです。そのかわり、貧しい人もちゃんと負担して下さい、というわけです。みんなで共同消費で生活しましょう、ただし負担は高くなりますよ、というのであれば逆進的に負担してもいいということなんです。
逆に、生活も市場原理が基本で、お金のある人はたくさん消費できるけれど、貧しい人は少ししか変えない、国家は最低限の秩序維持しかやらない、という社会を作るのであれば、金持ちが負担してくれないと困ったことになる。そのかわり貧しい人も自己責任で生きて下さい、ということです。ヨーロッパが前者で、アメリカは後者ですね。「大きな政府」なら「逆進課税」、「小さな政府」なら「累進課税」というビジョンになるはずなんです。
ところが日本ではどうなっているか。日本は、歳出を見るときはアメリカを見て、なるべく「小さい政府」にしましょう、と。ところが税金を見るときには、なぜかヨーロッパを見て、「他の国はみんな付加価値税で、直間比率は低い。日本みたいに高い国はない」とか言い始める。
「サービスはすべて政府がやります。貧しい人も負担してください。だから付加価値税ーー日本で言うと消費税ーー」を上げます」、これだったらわかるんです。だけど、自民党、民主党から社民党まで「民でできることは民で」と「小さい政府」にしてスリム化して、税金は付加価値税でやりますなんてことになったら、国家は混乱するに決まっている。社会の統合なんてできませんよ。
神野直彦(2003)「税はどうあるべきかーー国民主権を獲得するために」『別冊環 税とは何か』
まぁ権丈氏のモデルはかなりシンプルなものだし、上記の引用にしても、データ的にはさらに厳密な検証が必要だろう。私はあまり税は詳しくないし、もっと様々な角度からも見てみなければならない。だが、こういう論があることはもっと知られてよいだろう。
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関連エントリ:
『メーデー雑感+加藤淳子(2003)『逆進的租税と福祉国家』』
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20060502#p1