研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

鈴木亘氏の週刊東洋経済への反論

週刊東洋経済への反論1「未納の増加で年金は破綻しない」(上下)
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/30870598.html
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/30870634.html

以前書いたような世代間格差についての価値判断の問題以前に、まだまだ技術的なレベルでも論点があるのかも。今後のエントリも楽しみ。

結局、厚労省のやっているシミュレーションはブラックボックスであり、誰も確かめようがないのである。社会保障国民会議でこのシミュレーションを命じたと自賛するある委員も自分で計算結果を確かめたわけではないだろう。また、社会保障国民会議はデータを公開していると主張しているが、計算過程やモデル自体を理解可能な形で公開しているわけではない。第三者が検証しようがないものは本来信じるべきではない。

たしかにデータが公開されていても、計算過程やモデル自体がちゃんと公開されなければちゃんとした議論はできない。事実だとすれば、シミュレーションを命じた権丈氏はすぐに厚生労働省に頼んで公開を促して頂きたい。まぁここが論争の核心ではないのかもしれないが、そうだとしてもノイズは少ないほうがいい。

ちなみに上記文章の「ある委員」とは権丈氏のことだろう。細野氏は名指しだが、権丈氏は名指しではないのは何か大人の事情があるのだろうか。あるいは権丈氏が名指しで相手を批判しないという慣例をたんに踏襲しているのだろうか。こういう匿名批判(特にブログとかツイッターとかでは、知識人でも批判相手を某氏とかいったり、イニシャルでいったりとか、そういうのが多い)は、議論を混乱・誘導させるか、お互いの心象を悪くするくらいの作用しかなく、(特に市民に対して)何もメリットがないのでやめたほうがよいと私は常々思っているのだけど。

で、肝心の内容については情けないけれども判断する能力も時間もないので、以上の中継メモで終了...

いずれ年金制度のお勉強も兼ねてちゃんと自分でも検証したいが、その前に政治や専門家の世界で議論が進んで、現実の世界である程度決着がつくか、対立点がよりはっきりしてくると嬉しい。


参考エントリ:
東洋経済10/31号:年金特集をめぐって+金融政策と民意(おまけ)
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20091107

年金メモ+再分配メモ
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20091201