研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

2011年9月5日 第79回社会保障審議会介護給付費分科会議事録

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001sum2.html

ハイペースででてくるいろんな議事録を全部じっくり読むなんてとてもじゃないのでできないので、適当に誰かに焦点を当ててコメント拾ってみる。利害団体の代表ならばそのバックの団体の主張や利害を分かってれば面白いし、学者ならその学者の学問的バックグラウンドや主張・イデオロギーを知っていれば味わい深いわけだし。

まずは全国市長会介護保険対策特別委員会委員長(高松市長)の大西氏

○大西委員 まさに財源は、6年に一度の同時改定ということですので、医療と介護の連携をどうするかを真剣に話し合うことは非常に有意義だと思っております。特に地域では高齢者がどんどん増えてまいりますが、医療の対象者、介護の対象者というのは結局同一人でございますから、その個々人に対していかにサービスを的確に施していくかということを、医療だ、介護だという壁を超えて関係機関が全体として連携しながらやっていかなければならないという必要性を特に感じておるところでございます。
 香川県高松の実情を若干お話ししますと、先ほどから在宅看護サービスの話が出ていますけれども、医療部会のほうで訪問看護サービスの人口当たりのサービス利用者の割合を都道府県別に出したものを見させていただいたのですが、トップは長野県です。最下位が香川県でございます。数字は忘れましたが、4倍ぐらいの開きがあるんですね。それだけ香川県というのは訪問看護サービスの利用者が少ない。非常に県の面積が小さくて、その中に病院がたくさんあるという事情もあります。片方で救急搬送も時間は香川県は全国トップクラスで短いとか、そういう世界もあるわけでございますので、病院は結構充実している。
ただ、その医療機関が比較的充実している香川県高松でも医師不足の問題は深刻でございます。特に公的病院・市立病院などの医師、特に内科医などの当直医が確保できないというのは、これは現実的に深刻な問題でございます。
 したがいまして、単純に介護サービスのほうに医療提供を入れるとして、そのことで医師確保というような方法で義務づけとか、その辺の誘導策というのをやっていただいても、地域において、その辺の医師が確保できるのかどうか。あるいは逆に今でさえ不足している公的病院とか、そういう公的医療に携わっている医師が、そちらのほうにとられるのではないかというような問題もあるわけでございます。
したがいまして、それぞれの地域において、医療資源、介護の資源というのは、付与状況が大分違うと思いますので、そういう状況に応じて医療と介護の連携体制がきちんととれるように、全体の枠組みとしては全国的な枠組みで連携強化の方向で考えていただければいいんでしょうけれども、最後の具体的な連携体制というのはぜひとも地域で判断してとれるような制度的な設計をお願いしたいと思っておるところでございます。以上でございます。

全国町村会長(長野県川上村長)の藤原氏

○藤原委員 介護も医療も多分都市型と地方では大分内容が違うかと思います。川上村は先ほど大西委員が言われたように、長野県の田舎で本当に医療密度の低いところです。ですから自分たちでしっかり地域を守らなければいけないということが根底にあるので、そのつもりでやっています。在宅死が大体37%、がん、脳対応などは50%近く在宅で看てます。スタッフの少ないところでそれをやると本当にスタッフも大変ですし、医師も大変ですし、特に介護から医療に移ってがん等になりますと、夜の30分置きとか1時間置きに呼び出しがあるわけです。必ず電話があったら現場に行くということが大原則ですので、その労力というのは大変で、非常にその点では苦労をしていますが、しかし最後に看取った時には、本当に家族から近所の皆さんから大変喜ばれています。
そういう点で、都市型と山村型では色々な面で違うというものも、どこかで見直しのときに付加できないか、点数化ができないかということをお願いしたい。。ここでしっかり見ると、医療費が相当安くなってきまして、今、私の村は長野県で77市町村ある中で医療費は、最低です。1人当たり10万円ぐらい違ってますので、それは前段で相当しっかり見ていますので、医療へ逆にはね返って安くなっているということがあろうかと思いますし、何といっても自宅で看取れるということは、本当に家族も子どもたちも含めて、人間の尊厳的なものがしっかり確認できるというようなことでもあります。ですから介護とはまた別に向こう三軒両隣、そういうところの人たちの教育も非常に大事だと思っていまして、できれば介護の中で、そんな教育ができるようなメニューもつくっていただければ、全体的に山村としての看取り方ができるのではないかと思います。
ぜひ、全国一律のスタンドアローン的ではなくて、地域ごとのメニューがあれば、しっかりそういうメニューをつくって対応するというのが、これからの本当の地域の介護のあり方ではないかと思いますので、その点、ぜひ調査の段階で何か取り組んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

日本介護福祉士会名誉会長の田中氏の代理の石橋氏

○田中(雅)委員(石橋参考人) 施設に入所されている方の重度化に伴って医療ニーズも拡大してきているわけでございますけれども、その中で看護師の数が絶対的に足りない等ということもあり、この6月に施行された介護保険法の一部改正法の中においては一定の研修を受けた介護福祉士等が、痰の吸引や経管栄養といった医療行為については行えるということになりましたが、このことを広げていくためには、介護職員は一定の研修が必要になるわけですし、また、その行為を行う施設・事業所においても、看護・医療等の連携体制を整えたり、そういう努力をしていくわけでございますが、そのことに対する報酬上の評価を行うことが必要であり、今後の検討の課題の1つではないかということを申し上げたいと思います。

全員の発言について、そのバックグラウンドも踏まえてじっくり読んでったら面白いのだろうけど、今回はこのへんで。