研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

2011年10月12日 第46回社会保障審議会医療保険部会議事録

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001svys.html

○議題
1.医療保険財政の現状について
2.社会保障・税一体改革成案における高額療養費の見直し等のセーフティネット機能の強化、給付の重点化について
3.その他

例によって岩本氏の部分を抜粋。

○岩本委員 主に保険者の方々から保険料を上げる余地がないという趣旨の御意見が出たと思うんですけれども、公費で頼れるかというと、結局公費は税金で払わなければいけないわけですから、国民から見れば、保険料を払って税金を払ってということになります。この保険料というのは大部分が保険の給付に回ってくるということで、その給付が目に見えているということで負担の理解を求めるという形になっていますが、税金の方はかなり政府が信頼されていない部分もあって無駄に使われているのではないかということが言われておりますので、もし国民の方が医療保険料をこれ以上払う余地がないぐらい苦しいということであれば、税金を上げる余地も更にそれ以上ない。そうすると公費をつぎ込む余地もないという考え方もできるのではないのかなと個人的には思っております。

○岩本委員 公費負担が選択肢にあるかどうかという御意見が出ていますので、それに関連して私の意見を述べさせていただきます。
 この案がそもそも一体改革成案の中で出てきておりまして、そこで公費負担に関して縛りがかかっているということで、しかもこれは政府与党の決定という重みがあるものですから、それを覆す選択肢を提示するとなれば、具体的にどうするのかというところを出していかなければいけないということだと思います。既に消費税は一体改革の中で2015年をめどに5%分引き上げるとかなり大きな増税を入れているんですけれども、その中にこの部分が入っていないという現状なわけですから、こちらの方の財源を見つけるとなれば、消費税の今の考えられている財源あるいは既存の歳出を切り詰めてそちらに回すとかということを考えなければいけない。そうでなければ、5%に更に上澄みする何らかの形の増税を考えなければいけないという、そういう構造になっているんだと思います。
 意見としては、一体改革のところにも異議ありということで、公費負担増でやればいいじゃないかという御意見がいろいろ出るというのは勿論いいことだと思うんです。これは私個人の意見ですけれども、この場としては、一体改革の結論というか、成案を受けてそれを少しでもよくするという形で、あるいは具体的になっていないところを具体化するということでやっていかなければいけないのではないかという認識でおります。
 ただ、私は事務局の意見に必ずしも全部賛成ということではなくて、前回申し上げましたけれども、まず、現状があって、そして事務局案としては高額療養費の給付を広げて、その変わりに受診時定額負担を導入するという案が出て、私は後半の受診時定額負担の分に関しては、保険料を上げた方が国民はもっと納得しやすいのではないでしょうかという問題提起をしたわけです。そういうことで訴えれば、国民のかなりの方は納得していただけるかなと思っております。ただ、一体改革全体の文脈の中では、これは実現が非常に難しいことになっています。
 どういうことかというと、前半部分のところでこれで給付費が増えますので、財政影響の方でそれに連動して公費が増えるという形で公費負担の増が計算されているということになっているかと思います。公費負担というのは給付費と連動している部分が相当あるわけですから、そうすると、一体改革で出ている形で、その分どこか公費で削れということになれば、そこをいじらない限り何らかの形で給付費を減らさないと公費負担が減らないということになるわけです。それでもう選択肢が狭められているわけです。保険料を上げるというのは給付費の方には跳ね返りませんので、公費負担を下げるには何も働かないということになります。
 ですから、私が前回問題提起した高額療養費の方は給付をする。その分を保険料で面倒を見るといった場合には、給付費が増えて、それに連動して公費負担が増えてという形だけになってしまうので、そうすると一体改革で決まった公費負担の縛りを満たさないということで、却下されることになるということです。
 ただ、私はそれでは諦めなくて、そこは公費負担と給付費が連動しているという、現行の仕組みをいじらなければ、ということですから、もしこの制度改革、定額負担が国民が納得を得られるのかどうかということを正面から問うのであれば、そこも改革の選択肢に入れて、何らかの形で公費負担の仕組み自体を見直して、そこで財源をつくるということも考えられなくもないということをとりあえず申し上げたいと思います。
 もしそこをいじらないままでやっていって、このままいった場合、将来にもまた何か公費負担増の改革がもし必要だとなった場合には、なかなか財源が付きませんから、そうするとやはりどこかで公費負担を削ってという話になると、給付費を何らかの形で削ってとかという、そういう議論に結局なってしまうということかと思います。
 定額負担というのは非常に大きな問題だと思うんですけれども、今回の御提案でなかなか代案がないというところは、公費負担の縛りで決まっていると先ほどの説明のとおり理解しているんですけれども、尾っぽが胴体を振り回しているような気がしないでもなくて、そういう財政の公費負担の縛りによってこういう定額負担という大きなものが、入る入らないが決まってしまうというか、そこに選択肢としては行き着くしかないという形になっているというのは本当にいいのかなと。こういうことがまた繰り返されないのかなという、そういう思いでいるということです。
 ただ、選択肢は3つですけれども、定額負担は、前回申し上げたように、これは最後の手段だと言っていますが、ただ、定額負担に必ずしも反対というか、完全に反対という話ではなくて、現状のままですとやはり高額療養費の負担というのは非常に重いわけですから、これは何らかの形で変えなければいけないということで、選択肢は3つありますと。いまよりは厚生労働省さんが提案した案というのがまだましだと。それよりもいいものがあるかどうかということで探していくということだと思いますので、定額負担に反対だからといってすべての今の案が御破算になって、現状維持ということの議論の展開は避けた方がいいのではないかなと思っております。