研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

民主党の戦略と支持層

宮台真司民主党がとるべき道とは何か(インタビュー)』
http://www.miyadai.com/index.php?itemid=283

■でも、バラマキをやめるのと、弱者を放置するのとは別問題。現に社会的弱者だからこそ噴き上がる都市型ヘタレ保守は、小泉流「決然」にカタルシスを得ても、そのあと幸せになれません。そこに、都市型保守への「都市型リベラル」の対抗可能性があり、都市浮動票を取り合う二大政党制の可能性があるわけです。
■だから、民主党が示すべきは「都市型リベラル」の政党アイデンティティです。「小さな政府」が「弱者切り捨て」を伴ってはいけないと主張し、「都市型弱者」である非正規雇用者やシングルマザーや障害者の支援を徹底的に訴える。「フリーターがフリーターのままで幸せになれる社会」をアピールすればいいのです。

どの党も、「歳出削減」を訴えているのが今回の選挙である。「歳出削減」は、財界や金融界には当然肯定的に受け止められるが、公的福祉に関わる人達にとっては「歳出削減の一環としての福祉削減」という事態に備えなければならなくなり、うれしい話ではないだろう。

小泉政権の目指す「歳出削減」とその先にある「小さな政府」(もう十分に小さいんだけど)は、福祉の分野もとにかく切り詰めていくんだ、という路線であることはこの何年かではっきりしてきている。

では、民主党はどう考えているのか。彼らも当然?大規模な「歳出削減」を訴えているわけだが、福祉の分野に関してはどういう理念に基づいてどうするつもりなのか。自民と何が違うのか。これが、郵政だ年金だという個別の争点を越えて、よりメタレベルでの個人的な関心だ。しかし、民主党マニフェスト(http://www1.dpj.or.jp/manifest/index.html)の「日本刷新8つの約束」(ほとんどの人は、マニフェストを読むとしてもここまでだろう。福祉についてはp.8-9あたり参照。)を読んでもあまりそこらへんがはっきり伝わってこない。

宮台真司は、民主党はこの部分を「『小さな政府』が『弱者切り捨て』を伴ってはいけない」というふうに自民との対抗軸を鮮明にして、「『都市型弱者』である非正規雇用者やシングルマザーや障害者」らの票を獲得しろよ、といっているのだ。それらの層が票田としてどのくらいの規模になるのか、という疑問点はあるにせよ、戦略としては確かにわかりやすい。

それにしても、所属する階層と支持政党の関連という古くて新しい問題について、もうちょっと学んでみなくては。今回の選挙とか、特にこの関連がわかりにくいのではないか。

それは結局、構造改革や景気回復が各階層にどのような影響を与える見込みなのかがはっきりしないせいなのか。または、企業社会の崩壊とかフリーターの増大とか、労働者のワークスタイルとライフスタイルが再編成されている最中だからなのか。まったくの素人で全然わからない。詳細な分析、あったら求む。

余談だけど、個人的に「フリーターがフリーターのままで幸せになれる社会」ってのは基本的に共感する。この路線で社会保障とか労働政策とかを再構築していくことはできないのだろうか。

*参考までに民主党の「8つの約束」のうち、福祉に関連する2つの約束を載せておきます。

2.安心・安全で格差のない社会・身近な幸せの実現 
社会保険庁を廃止し、年金を一元化します。

民主党は、「身近な幸せ」を創造していきます。国民生活のセイフティ・ネットを確立し、将来に対する不安を解消します。また、男女共同参画、年齢差別禁止、パート均等待遇、障がい者差別禁止と自立の福祉など、公正な社会を創り上げることも国の重要な役割です。年金を一元化し、質の高い医療制度を整備して、国民の健康な生活を守ります。

* 年金制度を一元化し、保険料率を15%以内に抑えます。年金目的消費税の導入により月額7万円の最低保障年金を実現します。年金不信の元凶である社会保険庁は廃止します。
* がん」と正面から闘います。全国360カ所のがん拠点病院に「情報センター」を設置するとともに、がん患者が最良の医療を選択できるよう制度を拡充します。
* 新たな高齢者医療を創設します。カルテ開示・明細発行義務化など透明性の高い医療改革を進めます。
* 障がい者政策〜所得保障で自立支援、包括的な法整備を行います。所得保障を置き去りにした政府提出の障害者自立支援法案には反対です。
* アスベスト被害救済へ特別立法を行います。新たな使用をただちに禁止します。
* 在宅生活が続けられる介護保険制度をつくります。ムダを排除した上で、介護保険のエイジフリー化を実現します。
* 正規職員と非正規職員(パート、派遣、請負等)が公正に扱われる雇用条件の確立をめざすパート労働法の改正、年齢差別禁止法の制定などに取り組みます。
* 育児・介護休業制度の拡充やワークシェアリングの促進、メンタルヘルス対策に取り組みます。長時間労働を解消しワーク/ライフ・バランスを実現します。就労支援手当の創設などニート支援策を充実します。
* 警察改革で不正を一掃。警察官3万人増員で空き交番解消。犯罪被害者支援も強化します。
* 国民の預貯金を守ります。盗まれたキャッシュカード・預金通帳や偽造キャッシュカードで生じた損失は、原則として金融機関が補償することとします。

3.コンクリートからヒト、ヒト、ヒトへ
公立学校改革に着手し、月額1万6000円の@「子ども手当て」を支給します。

民主党は、ハコモノ行政から脱却し、コンクリートからヒトへと資源を投入します。そのためにもムダづかいを一掃し、人材育成に投資して、未来に備えることが重要です。教育においても、総合的な人間力(体力・知力・判断力)や確かな職業観などを育み、バランスのとれた人材の育成を進めていきます。それぞれのライフステージに応じた訓練・学習の機会を保障し、人材立国をめざします。

* 月額1万6000円の「子ども手当」を支給します。小児医療体制は全国290カ所以上の中核病院・地域センター整備等で充実し、義務教育終了までの窓口負担を1割に。現行の一時金に加え20万円の出産時助成金支給で次世代育成を支援します。
* 総合的な「生きる力」を高める公教育改革・学校改革に着手します。学校運営に関する権限を基礎自治体及び学校現場に移譲し、学校長の公募制導入などを可能にします。教員の質と数の大幅アップ、保護者・地域ボランティアの参画による土曜学校、コミュニティースクール、地域立学校化を推進します。
* 家計の教育費負担を軽減するため、希望者全員が奨学金を受けられるようにします。また奨学金の上限額を引き上げます。
* 幼保一体化・学童保育拡充で仕事と子育てを両立します。
* キャリア体験学習プログラムなどでニートの自立と就労を支援します。
* 失業者や自営業を廃業した方の再就職を支援するため、能力開発訓練を拡充します。また訓練中は、生活支援のために手当を支給します。定年を迎えた方々が地域で新しい人生をスタートできるよう、地域を活性化する税制改正などで民間活力を生かして再就職や継続雇用の機会を広げます。
* 縦割り行政を打ち破る「子ども家庭省」の設置を準備します。