研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

障害者自立支援法案に関するメモ

『真の「敵」は誰だ?@障害者自立支援法案』
http://bewaad.com/20050719.html

というのも、この法案が作られた源はなにかと見ていけば、経済財政諮問会議に行き着きます。厚生労働省からすれば、諮問会議においては、まずは支出すべき内容ありきで考えるべき(彼(女)らの言葉では「積み上げ」)であるということをねばり強く主張しているわけですが、基本的にその主張は理解を得られずに今に至っています。諮問会議の決定はそのまま閣議決定として政府全体を拘束することになるので、厚生労働省としては先日まで自分たちが発言していたようなことを障碍者たちから言われ、それに対して諮問会議の民間委員が言っていたような反論を職務上せざるを得ません。切ないなぁ。

また、自らのパイを増やそうとする際、ポジティブサムな経済状況であれば他人のパイを奪う必要はないのですが、ゼロサムであるなら他人のパイを奪わなければなりませんし、ネガティブサムであれば現状維持すらパイの奪い合いです。本来ポジティブサムを達成する責任があるはずの経済財政諮問会議が、そこに頬被りしてゼロサムを当然視し、その前提の刷り込みが行き渡った結果、程度に差はあれ政府から資源配分や所得再分配を受けるべき者同士がパイを奪い合い、結果としてものの見事な分断統治にはまっているわけです。切ないなぁ。

逆に言えば、まずは熱狂的な改革支持の中でまず総論を固めてしまい、その後いわゆるゾンビ企業、道路に代表される公共事業、郵政、社会保障などの各論において抵抗勢力を分断撃破した小泉政権の戦略は、それが意図したものか意図せざるものかは知りませんが、見事なものだったとは言わざるを得ないでしょう。それが多くの人にとってどのような結果をもたらしたのかはさておき。

そうなんです。ほんとに切ない。

このbewaad氏のエントリのネタの一つであるのがこれ。
『先日、衆議院で可決した障害者自立支援法案に対するさまざまなブログの反応』
http://d.hatena.ne.jp/swan_slab/20050717

しかし、自分を含めて関心をもつ人々のある種の限界も感じざるを得なかった。

社会保障のあり方を決める意思決定には、希少な財源をいかに使うかという経済学のもつ価値判断が不可欠であるのに、私たちには効率性と公平性を結びつけるロジックをほとんど手にしていない。浪花節的に窮状を訴えかけるだけでは、行政の理屈に太刀打ちできないのは目に見えている。

そうなんです。ほんとに切ない。

追記:真面目に考えると、これは財政と社会保障という全国民的な問題であり、「切ない」という言葉は軽すぎる気もするし、なんか「ネタ」っぽくして傍観者的にお茶をにごしているような感じもしてしまう。まぁブログってそんなもんか。

関連項目:
『障害者団体と厚労省財務省(と追記で経済財政諮問会議)』
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20050605