研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

1人親世帯の貧困率54.3%、先進国の中で最悪水準

http://www.asahi.com/national/update/1113/TKY200911130360.html

厚生労働省は13日、子どもがいる1人親世帯の「相対的貧困率」が07年調査では54.3%だったと発表した。親が複数いる世帯に比べて5倍以上。1人親世帯の子どもを取り巻く経済環境の厳しさが浮き彫りになった。国として初めて算定したが、先進国の中で最悪の水準だった。

 相対的貧困率は、貧困層が占める割合を示す。所得から税金などを差し引いた世帯の「可処分所得」を1人当たりにならし、高い順に並べた時の真ん中の人の所得を「中央値」と設定。今回の中央値は年228万円で、その半分の114万円に満たない人の割合が「相対的貧困率」となる。

 18歳未満の子どもがいる現役世帯(世帯主が18〜64歳)の貧困率は12.2%。そのうち大人が2人以上いる世帯は10.2%だが、大人が1人では過半数を占めた。

 経済協力開発機構OECD)の08年報告書(00年代半ばのデータ)で子どもがいる1人親世帯の貧困率を比べると、日本は58.7%と加盟30カ国中で最も高く、平均の30.8%を大きく上回った。

(中略)

 10月に初めて公表された全体の貧困率は、15.7%。

これはなかなかの数字だ。相対的貧困率ではなくて絶対的貧困率が問題だとして、「途上国の人々に比べればはるかに豊か」という議論をする人がいつもいるけど、これは確かに事実の一面を捉えているが、社会学相対的剥奪社会的排除、経済学の潜在能力理論の観点からすると、相対的貧困率はそれなりの政策的意味を持つ。

これは自分がインドに短期間住んだ経験を考えても正しいと思う。日本の貧困層はインドの中間層よりも「絶対的」には豊かかもしれないが、日本の貧困層は日本に住み、インドの中間層はインドに住んでいる。それがどういう意味を持ち、どういう社会的影響をそれぞれの国にすむ人々の与えるのかをを明らかにしたのが相対的貧困相対的剥奪の概念だろう。

もちろん、相対的貧困率の計り方やサンプルの特性についてはいろいろ議論が必要だろうが。