日医・原中会長、「増税で医療崩壊食い止めよ」
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E1E2E2E1E38DE1E2E2E6E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2
いずれリンク消えるだろうし、いくつかメモ。
税財政について
――日医は税金(公費)の投入ばかり強調しているが、財政難で実現は難しいのではないか。
「だから私は税金を上げないのは間違いだといっている。消費税にはこだわらないがいろんな税金があるのでそれらを増やすことが1つだろう。保険料もなんとかしないといけない。税金と保険料の納付の上限をなくして高額納税者なりの収入のある人はずっと納めてほしい。世の中のおかげで給料をもらっているのだから貢献してほしい。そうすれば医療費はかなり潤う」
「現在は医療機関の窓口でかかった医療費の3割を支払うのが原則だが、これはもはや社会保障といえないと思う。ヨーロッパは個人負担は基本的にゼロ。ただゼロだと町で買える風邪薬まで医療機関にもらいに来てしまうので1割程度の負担は必要だ」
――鳩山政権は税の引き上げに慎重だが可能か。
「こんなに税収が減ると思っていなかっただろう。だから(消費税を)上げないといってしまった。でも1年間に減収幅は10兆円もある。これでは政治は十分にできない」
「事業仕分けでなかなか効果がでないのは天下りの人数より(公益法人や独立行政法人の)組織の従業員の数がべらぼうに多いからだ。組織をなくさない限り(財源が)浮くことはない。4年間でそう簡単には整理できないと思う。だから税金を上げるべきだ。税金を上げないと医療崩壊は止まらない」
混合診療について
――行政刷新会議で議論されている混合診療の解禁など医療の規制緩和についてどう考えるか。
「メンバーが小泉政権時代の規制改革会議の委員と替わってないのが問題だ。公的保険ではなく民間にやらせるべきだと主張しているが、民間に任せたら医療は決してよくならない。アメリカがいま日本をマネしようと追いつこうとしているが、日本はアメリカの悪いところを向いているのはとんでもないことだ。国民皆保険が崩壊する一歩になる」
政治団体として
――政権交代で、政治団体「日本医師連盟」の存在意義は変わるか。
「変わると思う。日医連はこれまで、ほぼすべてのお金を自民党1党だけに使ってきた。だが、果たして何か良いことはあったか。社会格差が広がり、社会保障を壊そうとした。それに何の抵抗もできなかった日医はやっぱり弱かった。これからは国民を守るために闘う医師会になろうと決意している」
――政治献金も民主党にシフトさせるか。また、縮減する考えはあるか。
「縮減はしない。会員のお金なので有効に使っていく。ただ、地域によってはいろんな悩みがあると思う。今までのように組織内議員だけに使うのではなく、日本全体を眺めながら与党議員を中心に使っていきたい」
――今夏の参院選への対応はどうするか。自民党現職議員を推薦する方針を撤回することへの反対論も多い。
「まだ自民党議員を推薦しろと言う人は、政治の現場、本当の厳しさを知らない。自民党がこれまでどのぐらい我々のためにやってくれたかという結果の分析もない。感覚だけで発言している。まだ執行委員会の結論は出ておらず、具体的なことは言えないが、会長としてきちんと決意しなくてはいけない。少なくとも日医の常任理事以上は私の意見をサポートしてくれている」
政治的なことについてはあまりフォローしていないのでよくわからないが、この間の医師会選挙や原中会長については以下を参照。
原中勝征日本医師会会長誕生までの歩み(藤田幸久ブログ)
http://www.election.ne.jp/10870/82548.html日医会長選の中での候補者たちの一言、興味深かったのでメモ(権丈ウェブ)
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare290.pdf
ちなみに、原中会長は「現在は医療機関の窓口でかかった医療費の3割を支払うのが原則だが、これはもはや社会保障といえないと思う。ヨーロッパは個人負担は基本的にゼロ」といっているが、少なくともスウェーデンは診療は無料ではない。県によって状況は異なるようだし(スウェーデンでは医療は県が担当。というか、県は医療のためにあるといっても言いすぎでもない。財源は税。)、緊急か予約か、一般医か専門医かにもよるが、窓口負担が1000〜4000円くらいかかる。よって普通の診療ならば、日本の窓口3割負担とそんなに変わらない。
ただし、日本の高額療養費制度と同様の自己負担上限があり、下記サイトによると(おそらくストックホルムでは)診察代が年間で900Kr(1kr=13円で11700円)を超えるとそれ以上は無料だという(2007年現在)。これは日本の高額療養費制度に比べるとかなり低い。高額療養費制度では、1ヶ月間(同月内)に同一の医療機関でかかった費用を世帯単位で合算し、自己負担限度額(一般世帯で80100円)を超えた分がほぼ無料になる(wikiより)。これと比べるならば、「スウェーデンは個人負担はほぼゼロ」といっても大きな間違いではないかもしれない。ただし薬代はまた別かな。これはよくしらないのでそのうち調べる。
もちろんその低負担の代償(?)として、日本のように、受付での長い待ち時間と短い診療さえ我慢すれば、好きな専門医にいつでも見てもらえるという医療アクセスの良さは制限されており、基本的にはゲートキーパーの役割を果たす地域の診療所の一般医に電話・ネット予約によって見てもらい、必要ならばその後に専門医に見てもらうというシステムである。
ただし、少なくとも私の住むウプサラ県には、いわゆる「かかりつけ医」制度はなく、地域内の好きな診療所・一般医を選ぶことができる。また、予約なしで立ち寄れる診療所もいくつかあるようだ。私も最近、フィールドワークもかねて(?)、大した症状でもないのに予約して診療所にいったが、待ち時間は思ったより短く(木曜電話で翌週火曜診察)、費用は140kr(1kr=13円で1820円)であった。
また、もちろん専門医ではなく一般医による診療だったが、(専門的なことはわからないし、日本同様、医師によるばらつきは大きいだろうが)供給される医療サービスの体感的な水準は高いと感じた。これも専門的なことはよくわからないが、日本の個人経営の診療所(の一部)に比べると設備は整っており、医師の簡単な診察後に、血液検査と尿検査をし、その後すぐに検査結果を踏まえて再び診察があった(結果異常なし)。診察室は広い個室で、医師はイントラネットかインターネットかで検査室とやりとりしているようで、医師の診察後に別室の検査室で検査をし、しばらくして医師の部屋に戻って検査結果について報告を受けた。
医者も予約制のおかげで時間に余裕があるのか、帰り際に日本の医療制度や政治についてちょっと雑談してきたが、高額療養費制度の上減額とか細かい数値がちゃんと出てこなくて反省。スウェーデン人は議論の際に数字を大事にするらしいので、「高額療養費制度の額は、一般世帯で月額世帯あたり80100円(ただし同一病院・診療所)」を頭に叩き込んでおこう。
話をスウェーデンの医療制度に戻すと、このような予約を原則とする一般医(プライマリケア)制度それ自体は、専門医へのアクセスや病院の選択の幅がすこぶるよい都市圏の日本人には受け入れられにくいだろう。ただ、日本の医療の自己負担の高さを問題視して、専門医へのアクセスがよいままに(好きなときに好きな医者に診てもらえるシステムを保持したまま)自己負担額を低くすると80年代の老人医療のように医療費が上昇することになる。
私の原則的な規範的な立場は「自己負担減による医療費上昇それ自体はウェルカム」なのだが、それを公的医療保険制度の枠内でやる限り、医療費は税か保険でもってこなければならないし、それには限界もあるので、自己負担減と引き換えにした専門医アクセスの制限の問題は、日本が今後直面する問題の一つだろう。ただ、医師会の存在や日本人の民意を考えると、日本がイギリスやスウェーデンのようなプライマリケア制度を導入するのは想像できないが。
スウェーデン生活の手引き:病院・診療所の受診 (ストックホルムを中心とした、スウェーデン在住日本人のための情報ブログ)
http://swedeninfo.blog59.fc2.com/blog-entry-163.html#more*ただし、妊婦検診・出産は原則1度のエコーを除いて基本的には無料。あまり信頼できるソースは見つけられなかったが、日本で高い自己負担が問題視されている不妊治療も疾病と位置づけられ、原則的に医療保障制度の中で費用負担がされるようだ。自己負担額の有無、水準については不明。いくつかの情報は無料といっている。真偽はわからないが、医療保障の対象になっていることから考えると、おそらくあまり自己負担はないと思う。
スウェーデン生活の手引き:妊婦健診・出産後手続き(ストックホルム)
http://swedeninfo.blog59.fc2.com/blog-entry-117.html#more少子化対策における不妊治療支援とその問題点
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/306/6/Honbun-03chapter02.pdf
ウプサラ県の患者負担額(今はだいたい1Kr=13円くらい。2007年には1kr=17円とかだったらしい。)
http://www.lul.se/templates/page____11890.aspx