研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

メモ:西田亮介「社会はいかに私たちに関わるべきか」をめぐる議論(dojin、西田亮介、駒崎弘樹) 

ちょっと前のツイッターでの議論。杉田さんにまとめて頂いたのでブログにメモ。
ツイッターは双方向の議論がしやすくていいのだが、記録として残しにくく後々見たり考え直したりすることができないので、まとめて書いたときには整理してブログに転載したほうがよさそう。以前書いた中にもメモとしてとっておきたいのがあるので、そのうち気が向いたら整理しよう。

西田亮介「社会はいかに私たちに関わるべきか」をめぐる議論(dojin、西田亮介、駒崎弘樹
http://togetter.com/li/99354

自分にとっては、ここでの議論あるいはその後の駒崎さんとの議論(最後にコピペ)の(ややアカデミックな方面に限定した)収穫は、

ミクロ経済学系の公共経済学、政策評価系の応用計量経済学(因果推定等)、社会学系の社会政策学や福祉国家論、政治哲学や社会思想に基づく議論は有益だが、現在の日本の社会保障財政についてきちんと議論するにはマクロ経済学(短期的な財政・金融政策はもちろんだが、中長期の財政の維持可能性の議論や国債管理の話など)の視点抜きには難しい。」

につきる。人並みの頭脳しかもたない自分には(少なくとも当面は)専門を一つしか選べないのでマクロ経済学はあまり深追いできないが、時事的な政策論に口を出すつもりなら、もう少しマクロ経済学の専門的なところまでフォローしなければならない。外部からは経済学やってるっていうとマクロ経済についてある程度専門的に語れるはず、と期待されるし。。。

その後の議論1.鈴木氏のシノドス論稿について

鈴木氏のこの主張は経済学一般というより彼の政治的立場によるもの、とだけ言っておく。RT @synodos 反論ぜひ! @wsary @lilyyarn09 #synodos 凄まじい切り貼りの論理。経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI

posted at 21:18:58

政治的立場というよりも、社会保障制度についての規範的立場というべきでしたね。訂正します。@lilyyarn09 それだけでは困ります。ポジトークだから今後鈴木氏の意見はバイアスをかける必要があるとのこと。@synodos @wsary

posted at 21:40:58

鈴木氏の実証研究や政策提言については断片的ですがブログに書いてきたので暇なときにでもhttp://ow.ly/3ZQPr  彼は社会保障について貴重な実証研究と政策提言を行ってきた数少ない経済学者の1人というのが私の基本認識 @lilyyarn09 @synodos @wsary

posted at 21:47:44

日本に帰ったときにも彼の読んでない新刊全て買って読んだ。徐々に実証研究ベースの提言から規範的立場に基づく政策提言に軸足を移してる。 RT @synodos 反論ぜひ @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @lilyyarn09

posted at 21:55:03

もちろん実証研究ベースの提言を放棄しているわけではない。ただ鈴木氏の主張の多くは経済学というより彼の理想社会像から演繹することが可能。RT @synodos 反論ぜひ @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @lilyyarn09

posted at 22:01:20

例えば鈴木(2010)「財政危機と社会保障」第8章の「喫緊の提案」が分かりやすい。RT @synodos 反論ぜひ @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @lilyyarn09

posted at 22:07:07

これまで駒崎さんにも何度も教えられてきたように、だから社会福祉法人改革は必要だと思います。情報公開、参入規制の緩和、イコールフッティング等等。@hiroki_komazaki でも、中村議員の暴露した「社会福祉法人内部留保1兆円」は僕も吃驚した。@synodos @wsary

posted at 22:11:54

だがこういうミクロ的構造改革をやるときに鈴木氏(2010)「財政危機と社会保障」第8章のような選別主義的政治哲学で行うと、 RT @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @Hiroki_Komazaki @synodos

posted at 22:19:10

@wsaryさんのようにギリギリのところで生きている人や中間層だが高リスクな人などは結構なダメージを受ける可能性は十分にある。RT @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @Hiroki_Komazaki @synodos

posted at 22:22:53

鈴木氏がそのリスクに気付いていないわけではなく、低所得者への直接補助という「選択と集中」で解決すべしと述べている。RT @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @Hiroki_Komazaki @synodos

posted at 22:25:19

私は「福祉国家パラドックス」(http://ow.ly/3ZRnN )故に(それだけでないが)その規範的立場に賛成しない。RT @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @synodos @Hiroki_Komazaki

posted at 22:28:36

だが規範的立場に係らず個別の実証的論点や個別の規範的論点で合意点は少なくない、のが救いなのか混乱の元なのか。。。RT @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @synodos @Hiroki_Komazaki

posted at 22:37:19

RT @wsary: @synodos @dojin_tw @Hiroki_Komazaki じんるいのげんかいを考慮して予習するからちょとまっててくださいね。(社福の内部留保は文面通りでない側面がある。<合理化><規範>感覚の乖離は、福祉・医療現場では全く逆のモラルハザードと不条理を生産しかねない)

posted at 22:42:43

いずれにせよ鈴木氏は医療、施設介護、保育業界をズブズブ濡れ雑巾といっており、より参入規制の緩い居宅介護はここでは批判の対象となっていない。 @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @synodos @Hiroki_Komazaki

posted at 22:49:50

私のような「大きな政府」+「多様な主体」派にとってはここらへんに妥協点があるかも?RT @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @synodos @Hiroki_Komazaki

posted at 22:51:59

「経済学」的により専門的に議論できそうなのは、ここまでの話よりも「公定価格では効率化の動機なし」や「医療・社福法人は非効率率」などの個別論点。@wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ http://bit.ly/gNoKcI @synodos @Hiroki_Komazaki

posted at 23:09:45

鈴木氏も関連する研究として、訪問介護サービスについての実証研究を行ってきた。最近ではこれとか http://ow.ly/3ZS74 RT @wsary 経済学と現場の乖離に立ち眩んだ。 http://bit.ly/gNoKcI @synodos @Hiroki_Komazaki

posted at 23:17:56

その後の議論2.議論1を踏まえた上での駒崎氏とのやりとり

@hiroki_komazaki 国際比較研究したことないので断言はできないが、比較的小さな政府で普遍主義的な医療・介護を提供している国の代表例はやはり日本かと。日本がベストかはともかく、ミクロの細かい所ではないマクロな制度レベルで現時点で参考になる国はあまりないかもと最近思う。

posted at 07:01:16

@hiroki_komazaki 社会サービスについては医療・介護保険・自立支援法(及び短命だった支援費制度)の普遍主義的な側面を継承しつつ、保育も含めて家族主義・選別主義的な側面を薄くして(そのためには一定の財源投入が必要ですが)、

posted at 07:09:40

@hiroki_komazaki 効率化については価格自由化や混合医療・混合介護などのハード路線の「準市場化」よりも、公定価格+参入規制緩和+サービスの質面での競争促進などのソフト路線の「準市場化」のほうが望ましいと私は思っています。

posted at 07:13:24

@hiroki_komazaki それによって、社会サービスの階層消費化→政治的分断(特に公的サービスへの中間層の不満・不支持)→公的サービスの劣化のスパイラルを防げると思うからです。もちろん医療・介護・保育それぞれ許容せざるを得ない「階層消費」はあり得ます。すでに介護では顕著。

posted at 07:19:23

@hiroki_komazaki 認めるべき階層消費は、医療>介護>教育>保育の順に厳しくすべきと考える。ただしどれも普遍主義(所得や状況に係らず必要なサービスを必要に応じて受けられる)をベースにそれなりの水準を維持したい。

posted at 07:26:03

@hiroki_komazaki でないと中間層以上に階層消費への要求が高まり、それが政治に反映され、低所得・高ニーズ層が打撃を受けると危惧。予算制約がきついのは承知で、中間層が恩恵を実感できる水準まで負担高める改革が必要。(マクロ経済や負担のあり方についての議論は置いときます)

posted at 07:38:12

@hiroki_komazaki 準市場化は程度問題。私が望ましいと思う準市場化と「価格は上限・下限を設けた上で自由化」「最低限のサービスは規制し保障」という鈴木亘氏の意見との間に明確な境界線はない。あとは財源調達可能性への判断と公的福祉や階層消費についての規範意識の差の問題。

posted at 07:47:56

@hiroki_komazaki 問いかけとずれた代わり映えしない持論すみません。私は保育での価格設定や「最低限のサービス」についての駒崎さんのご意見が知りたいです。私は保育は医療・介護・教育よりハード路線の準市場化の余地あるかとも思いますが、正直よくわからないので。。。

posted at 08:19:40

RT @junsaito0529: 後で熟読 QT 日本銀行総裁 白川方明 独占インタビュー 政府、民間、日本銀行に求められる 日本経済の根源的問題解決の「意思」|デフレ日本 長期低迷の検証|ダイヤモンド・オンライン http://t.co/HEG3gv0 via @dol_editors

posted at 08:22:04

@Hiroki_Komazaki 財政破綻IMF等による福祉大幅削減+負担引上だとするとその可能性あるけど、景気回復と負担引上で回避可能ではないでしょうか。RT @Hiroki_Komazaki 再配分のパラドックス」と財政破たんだと後者の方が結果として多くの国民が困る

posted at 21:05:30

@hiroki_komazaki 厳密にはシミュレーション必要ですが、OECD平均レベルの経済成長と平均超の政府規模を想定し、労働力の浪費を防げれば、高齢社会でもそんなハードランディングを想定した福祉カット・選別主義化は必要ないと思います。

posted at 21:16:18

@hiroki_komazaki めしくったらまた。

posted at 21:20:19

@hiroki_komazaki ごちそうさまでした。

posted at 21:48:57

@hiroki_komazaki まず債務うんぬんですが、プライマリーバランスで考えると(それが延命といわれたらその通りですが、別に高齢化が一番激しい時期に債務をゼロにすることを目指す必要はない)、そこまでハードなことを考える必要はないのではないですか。

posted at 22:06:58

@hiroki_komazaki 「そこまでハード」というのは、「10%消費税増税」ではなく「今の債務を減らす」の部分です。

posted at 22:09:53

@Hiroki_Komazaki また少なくない経済学者が指摘するように、消費税だけでなく所得税・個人住民税に増税・改革の余地が大きい。金持ち増税とか累進性強化とか以前に、全ての所得階層で負担が低い。http://ow.ly/410Y2 http://ow.ly/410YU

posted at 22:13:17

@hiroki_komazaki もちろん、経済がずっとこの調子だとどうあがいても駄目な可能性はある。ただそれに対応して租税負担諦めて歳出を切り詰めても、老い・病・育児・障害という福祉ニーズが消えるわけではないからそれは民間保険かボランティアか親or子どもの負担にシフトする。

posted at 22:18:31

@hiroki_komazaki そこまで落ち込んだらいよいよ民間・ボランティア(文字通りあらゆる形態の「無償労働」)などを盛り上げるかという議論になるかも。でも現状はまだましではないか。普遍主義的医療・介護制度もあるし、消費税も所得税も、先進国最低レベルという希望?がまだある。

posted at 22:29:18

@hiroki_komazaki まぁ社会保険料負担はそこそこだし  http://ow.ly/411Df 、医療はともかく介護保険を普遍主義的といえるのかという突っ込みは有り得ますが。。。

posted at 22:32:10

@hiroki_komazaki  財政の持続可能性や債務管理の問題は成長率と金利の関係にも依存するし、私の知識不足もあり具体的な試算はよくわかりませんが(すみません。。。)、 景気回復と増税で、それでも駄目ならばよりハードな選択を考えざるを得なくなるんだと思います。

posted at 22:47:19

@hiroki_komazaki 増税については、所得税・消費税の課税強化・増税をベースに、資本課税・相続課税・法人課税などを、最新の経済学研究の成果を踏まえて経済活動を阻害しない形で効率化・強化(必ずしも税率アップだけではない)するということになるのではないでしょうか。

posted at 22:51:38

@hiroki_komazaki 必要増税額については国の中長期推計 http://ow.ly/412zN や駒崎さんも委員を務めた社会保障国民会議のシミュレーションも参考になるでしょうし http://ow.ly/412CQ

posted at 22:54:40

@hiroki_komazaki でも国民は介護保険による負担増を受け入れました。要はどういう恩恵の見返りに負担増をするかというメッセージを明確にすることが大切なのでは。そういう意味では財政再建を全面に出すより社会保障を全面に出した政治的メッセージのほうが重要かと。

posted at 23:05:45

@hiroki_komazaki 法人税増税というよりも課税ベース強化と減税の組み合わせが重要かと。所得課税については、地方比例住民税の引き上げ+福祉拡充を首長さんたちが訴えてくれると(私の立場からは)いいのですが名古屋などは逆向きですね。

posted at 23:10:22

@hiroki_komazaki 支持率低いのは、政策哲学というよりも政局のせいでしょう。そもそも政策哲学について与野党ごちゃごちゃすぎて、国民も理解できていないのでは。菅さんや与謝野さんや谷垣さんの政策的主張は実は大差ないわけだし。

posted at 23:15:09

@hiroki_komazaki 社会保障の「マイルドな準市場化+財源投入」という政策ビジョンを全面に押し出して、少しリフレ色を強くして(これは素人の気分的立場)、債務管理は長期的になんとか対応するって青写真を見せてくれれば、国民の支持・期待も高まるのでは。ないものねだりですけど

posted at 23:20:38

@hiroki_komazaki いえいえこちらこそ。自分も今日書いたことのほとんどは専門外かつ知識不足のことなので、もっと精進します。日々の専門的鍛錬・研究と、こういった議論で求められる知識・資質・センスはけっこう違うので、それを痛感して両者を見つめなおすいい機会になります。

posted at 23:25:28