研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

子どもの最貧国・日本

子どもの最貧国・日本 (光文社新書)

子どもの最貧国・日本 (光文社新書)

本のタイトルは扇情的だが、中身は、児童福祉司ソーシャルワーカーとしての著者の現場経験と、統計的・計量的分析を中心とした欧米や日本の調査研究レビューを踏まえた堅実な良著。

豊富な事例紹介や研究紹介をベースとした著者の考察には説得力がある。巻末にはきちんと参考文献の出典が掲載されており、紹介されている実証研究をさらにチェックすることも容易だ。久々に読み応えのある新書だった。

ただし、政策分析や政策提言は弱い。だが、著者が実務家であることを考えると、そこまで望んではいけないだろう。むしろ、実務家であるにもかかわらず、自らの経験に埋没せず、冷静に学術的研究に依拠して考察している姿勢は貴重かもしれない。

現場を知らない研究者、政策立案者、政策コンサルタントが机の上でパパっと考えたことが政策論としてまかりとおっていることを日々実感する今日この頃(前回の日記のことではなく、私の周りの話です)、そしてそれが社会構造上、ある程度不可避なことも(もともと理屈としてはわかっていたが)なんとなく実感してきた今日この頃、本書のような本を読むと、なんだか励まされる。

最後はグチか。

子どもの最貧国・インド


石井光太氏の「地を這う裸虫 切断されたインドの浮浪児たち」が月刊PLAYBOYで連載中。第二話 闇に消えた子どもたち。

PLAYBOY (プレイボーイ) 日本版 2008年 11月号 [雑誌]

PLAYBOY (プレイボーイ) 日本版 2008年 11月号 [雑誌]

このルポを書いたからって、読んだからって、彼らの現実が変わるわけではない。だけど、こういう世界が当たり前に存在していることを知りたければ、読んだほうがよい。そして、いい意味でも悪い意味でも、インドの大都市でたかってくるストリートチルドレンが、ただの「貧しくて可哀想な子どもたち」ではないことを知ってしまうだろう。

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http://d.hatena.ne.jp/dojin/20080904#p1