研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

ふたたび鉄道事故ネタ

『"怒り"のオーバーラン、していませんか?』
http://www.ken1.tv/message/message050502.html

もうひとつ、報道の論調で気になるのは、「利益優先・安全軽視」という、大事故の度に使われる決まり文句の繰り返し。その言葉自体が間違いだとは言わないが、それがあたかも"大罪人・JR西日本"特有の悪魔の発想であるかのような捉え方は、明らかに間違いだ。少しでもダイヤが乱れると駅員に喰ってかかっていたのは、誰なのか。ラッシュの混雑を嫌って、通勤時間帯の列車増発(=過密ダイヤ)を歓迎していたのは、誰なのか。さらに遡るならば、国鉄時代に大赤字(利益優先でなかった結果)を批判して、私企業(利益追求体)JRの誕生を歓迎したのは、誰だったのか。そういうことを全部棚に上げて、ただJR西日本の現状だけを悪者にしている人(活字もテレビも、読者も視聴者も含む)は、本気で悲劇の再発防止を考える気があるのだろうか?

『JR事故の責任は日本国民にあるような気がしてきたぞ』
http://shinta.tea-nifty.com/nikki/2005/05/sekinin_4dc4.html#more

前出のニーチェ的鉄人東大法学部生氏によれば、日本国民なかんずく関西人に顕著なこの「上司の言うことなら何でも聞きます隣の部署の不幸にも目をつぶります的ヘタレサラリーマン根性」と「俺は顧客だ顧客の言うことを聞け的怒鳴り殺し広域暴力団員顧客体質」というのものを矯正し、悲惨な事故の再発を防止するためには、なんとただ1つ、「社会全体がスピードを落とせば良いだけ」でいいそうだ。おおおお!何という単純明快快刀乱麻一刀両断的ご賢察!!僕、「社会の矮小なルールに埋没した詰まらない人間」すぎて全然気がつかなかったよママン!!


同じような考え方を、前者はマジメに、後者はアイロニックに伝えているわけだが。両者の間には、根本にはpro-capitalism(もしくは、資本主義否定しても現実的じゃねぇだろ主義)かanti-capitalism(もしくは、やっぱり資本主義そのものの病理と向き合わなければならねぇだろ主義)かみたいな対立があるように思える、というのは考えすぎか。私はどちらにも共感してしまう。今回の件にかぎらず、様々な局面でこのような価値観(資本主義観?現世観?)の対立に出会う。どう考えたらいいものか。


関連項目:
列車事故について』
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20050501
『前回の追記』
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20050502