研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

ゲーリー・ベッカー来校

dojin2005-06-12


2,3年前に、人的資本理論で有名なノーベル賞経済学者のゲーリー・ベッカーが一橋大学に来て講演した。どんな内容かあまり覚えていないが、一つ鮮烈に記憶に残ったグラフがあった。私の記憶が確かならば、それは縦軸が平均寿命、横軸が年の時系列グラフであった。そして、アメリカ人の教育レベルの高い集団と低い集団の相方の平均寿命を比べていて、「教育レベルの高い集団のほうが寿命が長く、その差は年々開きつつあります。だから教育は大事ですね」みたいな話だった。
私にはどう見ても「教育格差によって寿命にまで格差が生じる。しかもその差は年々拡大している」という衝撃のグラフだったのだが。一緒に聞いていた友達にそのことを後で話したら、「まぁそういう見方もあるけど・・・」と苦笑された。ちょっとしたカルチャーショックだった。

そして、今年も来ました。ゲーリーベッカ−。用事があって途中からしか出られなかったが、レジュメを見たらありました、今年も似たような資料が。ただし、縦軸は平均寿命ではなくて相対賃金であった。(上の写真のグラフ)

そのグラフは、アメリカ人の中のGraduate School卒、College卒、Some College卒の3集団を取り上げていて、それらの間の賃金格差を比較するものであった。1963年には、Some College卒の相対賃金指数が1.2ぐらいなのに対してGraduate School卒とCollege卒の相対賃金指数は1.35ぐらい。それが2001年になると、Some College卒の相対賃金指数が1.25とほぼ変わらないのに対して、College卒は1.7、Graduate School卒は2.1程度。学歴間の賃金格差が大幅に広がったというわけだ。

このグラフのイメージは、少々小さいけれども、アップした写真でなんとなくわかると思う。白点のGraduate School卒の相対賃金が急激に上がっているのに対し、一番下の黒点のSome College卒の相対賃金は横ばいである。ちなみにこのグラフの出典は、Murphy,Erin S."How pervasive are the Gains from Schoolong" St. Norbert College, Worling Paper, April 2003らしいです。

どういう統計の取り方をしているのかよくわからないし、このグラフをベッカー教授をどのように説明したかはわからないから、あまり安易なコメントはできない。しかし、ベッカー教授の講演のあとに、ご丁寧に10分くらいかけて講演内容を解説してくれた経済学部の某教授は、このグラフを解説しながら、「だからみなさんにとっていかに教育が大切か、よくわかるでしょう」という趣旨のコメントをしていた。

このブルジョア経済学者が!万国のプロレタリア団結せよ!と思って当りを見回したら、私も含めてプチブル志向のプロレタリアばっかりだった。ある意味、団結しているかも。