研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

他ブログでのコメント(追加あり)

稲葉さんのブログとかでいろいろとコメント書いたのでメモ。しかし現実の(紙媒体の)言論界で活躍している人たちがあんなにブログのコメント欄に集まって盛り上がってるの初めてみた。

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20051111
http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20051121
http://d.hatena.ne.jp/svnseeds/
http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20051120

で、稲葉さんは21日のブログに

さてここで確認しておくべきことは、議論が当初の筋からそれてしまっていることです(それが悪いとはもうしませんが)。つまりいつの間にか話が「リフレ派は格差をどう考えるか」に移行したのですが、当初の話題は別のことだったのですよ。そっちの話はどうすれば再開できますかね。とはいえ論点がはっきり言って全く定まらず、売り言葉に買い言葉で割とどうでもいい話になってしまった嫌いはありますが。

といってますが、最初の論点てなんだろか。内藤さんと山形さんの楽しく興味深い議論は置いとくとして、私の部分に関わるところは、山形さんの

日本の状況も、既存労働者の権利を守れと旗をふり、パートやフリーターを蔑視する左翼的なスタンス(かれらを十分な保護や福利厚生のないかわいそうな存在だと論じ立てるのは、そういう存在を二流労働者として蔑む見方でもあります)は、たぶん若年労働の就職難を後押ししてるんじゃないかと思えます。それはネオリベなんかよりは、死に損ない労組左翼のせいがあるかに大きい可能性もあります。

に対して

どうでしょうね。日経連は1995年の『新日本の日本的経営』ですでに「雇用の流動化」と「多様な雇用形態」という戦略を打ち出してるみたいですし、望み薄な感じもしますが一部の労働組合はパートやフリーターの組織化に取り組み始めているみたいですし。労組左翼運動の「意図せざる(?)結果」の影響は多少はあるかもしれませんが、少なくともここ十年でみれば、「ネオリベ」と世間一般で呼ばれるものと比べれば、労働市場の状況には大した影響を与えてないのでは。素人観測ですが。

って書いた後に山形さんの

>やまがたさんはdojinさんの議論にお答えできるんでしょうか?

もちろん。「それがどうした」の一言です。左翼がフリーターを組織化したら、かれらの労働力としての存在意義がなくなってかれらも使われなくなるでしょう。不景気で労働需要の絶対数が減っているために、従来の正規雇用を減らそうという動きが起きていて(「いわゆるネオリベ」ですが、別にそうした思想的根拠でやってるわけじゃなくて、企業は不景気の中でリスクを減らそうとしてるだけです)、左翼的な運動は雇用の流動性を減らす方向に努力することでそうした雇用形態に対する需要すらなくす方向に動いているという話です。不景気が最大の問題で、「ネオリベ」なんてのが別にあるわけじゃなく、具体的にある労組左翼は問題を悪化するように機能しているという話で何も「お答え」するものはないんですが。

ってのがあって、次に稲葉さんの

それから「労組左翼」というくくりには問題がある。企業内労組(その多くは左翼じゃないが)は終身雇用を守る側にコミットする限りでは、大学院同様のバッファ機能を支えているわけでしょう。左翼労組は官公労と一部のパート労組。そして官公労の場合も「抵抗勢力」としてやはり雇用不安へのバッファ機能を果たしていないわけでもないのでは? 
またパート組織化に積極的なのは左翼だけじゃなくて、ゼンセンという右翼(?)もいるので、パート組織=労組左翼というわけでもない。
労務屋さんはどう思われます?

ってのがあって、次に私の

もう投下する燃料はありませんが。。。たしかにゼンセン同盟は明らかに労組左翼ではないですよね。いまの時代の「労組左翼」ってどんな感じなんでしょう?

あと『いわゆる「ネオリベ」ですが、別にそうした思想的根拠でやってるわけじゃなくて、企業は不景気の中でリスクを減らそうとしてるだけです』というのはそのとおりで、あまり「ネオリベ」を資本家・持てるものの陰謀のようにみなすのは意味がないと思いますし、『新日本の日本的経営』にしてもそうでしょう。ただ不景気下の対応として、結局弱いもの・能力の低いものから痛い目にあうのは勘弁してくださいよ、しかも富めるものはけっこう富めるままじゃん、という感情があり、そこから陰謀史観が生まれるのは当然だと思います。リフレ派が左翼に指示を得られない・関心を持たれない理由としては、左翼が問題視するのが、「景気悪化による労働者の生活悪化そのもの」ではなくて、「痛い目にあうのはいつも弱いもの・能力のないものが先」というあたりだからな気がします。「リフレで景気よくなっても、また10年後とかに何らかの理由で景気悪くなったらどうせまた弱いものから切り捨てだろ?そういう社会構造そのものが気にいらねぇのに、リフレ派はそういうことについては何もいわねぇ。でも革命ともいえねぇ。企業社会批判ももはやできねぇ。どうしよ。でもとりあえずネオリベは批判しなきゃ。」みたいのが今の左翼の状況ではないでしょうか。

バッファ機能の話、もっと聞きたいです。

ってのがあって、ここで「リフレ派がうんぬん」っていったから「リフレは格差をどうみるか」の話になってしまったのだった。まぁ今も稲葉ブログでワークシェアリングに関するコメントが続いているようなので、勉強させて頂こう。

まぁどっちにしろ、労組の話はもうこれ以上何もわからないし何も書けない。分相応に傍観者に戻って今後のお勉強課題にしよう。