研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

大麻メモ

大麻入手「できると思う」3割超…関西の4大学(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091029-OYT1T01097.htm

大麻の入手の難しさの設問(3大学で調査)は、「少々苦労するが何とか手に入る」の回答が3200人と2割を超え、「簡単に手に入る」も1447人で1割弱あった。使用については「個人の自由」を1454人(7・7%)、「一回くらいなら構わない」を106人(0・6%)が選択。大麻の印象として804人(4・2%)が「気持ちよくなる」を選んだ。

 友人の大麻使用を知った場合、7割が「やめるよう説得」「通報」などを選ぶ一方、1割の1889人が「個人の自由なので放っておく」と回答。使用を勧められたら、「断れないかもしれない」とした人が1166人(6・2%)いた。

 4大学は集計結果を踏まえ、薬物をテーマとした講座を共通科目に盛り込むなど再発防止教育を強化する方針。集計を担当した関西大学長室の川原哲夫次長は「学生を取り巻く環境は、大学側が思う以上に危うい状況にある。自由や自己責任をはき違えて薬物に走らないよう、しっかり啓発したい」と話している。

「個人の自由」や「一回くらいなら構わない」の率は意外に低い。上位偏差値校の学生というサンプルの特性か。

それにしても、もうそろそろ、違った意味での「啓発」が必要なのではないか。少なくとも大麻については他の薬物と分けて議論したほうがいいと思う。若者の間で大麻が一定程度広まっており、海外ドラマとはいえ、Sex& the Cityのような人気ドラマでも主人公が楽しげに吸っているシーンがでてくるというのに*1いつまでもこのような「指導」一本槍の姿勢でいいのだろうか(もちろん立場をわきまえた官僚答弁だろうが)。

下記宮台ブログ(6年前か。。。)にあるように、マリファナ合法化は「どんな社会をよしとするかの議論と表裏一体」なので、刑罰の軽減化、非犯罪化・合法化を実現するにしてもそれなりの議論の積み重ねがいるだろう。個人的には、そろそろそういう議論を始めたほうがいいと思う。

参考:

マリファナ合法化の諸問題 〜個人的法益とともに社会的法益を考慮すべし〜
http://www.miyadai.com/index.php?itemid=40&catid=4

カンナビスト(大麻の個人使用の未犯罪化を求める市民団体)
http://www.cannabist.org/index.html

たとえばここ↓
2006年を迎えるにあたって――世の中よかれ麻よかれ
http://www.cannabist.org/database/cnews/cnews01301.html

にしても、このカンナビストの文章にでてくる以下の判決文を読んで、そんな理由で規制することも合理的ということができるのか、と少しびっくりした。

 このように、大麻の有害性については、多様な見解が存するところ、国民の福祉を向上、増進すべき責務を負っている国としては、国民に対する明らかな害悪を除去すべき責務を負うことはもちろんであるところ、その害悪の存否について、前記のとおり、異なる議論の存する大麻の場合であっても、その有害性を肯定する研究が存在し、人体に対し害悪をもたらす可能性が否定できない以上、国民の福祉を向上、増進するという公共の福祉の見地から、大麻の栽培や所持を規制することには合理性を認めることができる。」(平成17年4月19日、高松高等裁判所判決、大麻取締法違反事件、平成16年(う)第400号)

ちょっと前、卓越主義的リベラリズムについて議論しようということで、友人2人とジョセフ・ラズの論文を読んでいて、リベラリストを自称するカナダ人の友人(大麻はもちろん、あらゆる薬物は合法化されるべきと主張。自分はそこまではついていけないかも。)が、「ラズありえん」といっていたのを思い出したが、ラズの論理構成からいうと、上記の判決文のような主張は容認されるのだろうか。まぁきっとケースバイケースなんだろう。うーん。

ちなみに、カンナビストは、「その有害性を肯定する研究が存在」という上記事実認識に対して以下の反論を展開。これはこれで、本当にそう断言できるのかはわからないが。

裁判所は「有害性を肯定する研究が存在」していると述べていますが、それは古い翻訳情報や動物実験で、われわれの調べたところでは、国内で大麻の使用が問題になりはじめた1970年代前半から約30年あまり、大麻による肉体的・精神的な弊害は起きていないことが明らかになっています。

*1:ただし、親と同居している少年みたいな彼氏の家で、親がいないときに学生時代のようにマリファナを楽しむ、という場面設定のときだけど。でもその後、親が帰ってきてマリファナが見つかって、彼氏が怒られるのを大人らしくかばってマリファナを持って帰って、仲良し4人組(弁護士含む)とまた楽しむ、というオチ付き。