研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

メモ:移動介護費減額は違法&介護職の医行為実施へ試案を提示

一つ目。

「移動介護費減額は違法 東京地裁
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010072902000060.html?ref=rank

 障害者自立支援法に基づき支給される移動介護費用を申請したが、月三十四時間分減額した東京都大田区の決定は違法だとして、脳性まひなどの障害のある鈴木敬治さん(58)が区や都に処分取り消しなどを求めた訴訟の判決が二十八日、東京地裁であった。岩井伸晃裁判長(川神裕裁判長代読)は「区の裁量権を超えており違法」として、区の決定を取り消した。
 判決によると、鈴木さんは身体障害1級の認定を受け、外出時は車いすの移動で介護を要する。区の要綱は、支給対象時間の標準を月三十二時間に設定し、外出実態に応じて加算することを定めている。鈴木さんは二〇〇六年九月以降、月百二十四〜百四十七時間分を申請したが、区は月九十〜百十三時間分しか認めなかった。
 岩井裁判長は、要綱について「一定の合理性がある」と認定したが、「原告の提出資料などから、少なくとも月百四十七時間の外出を認めることも辛うじて可能」と指摘。申請分を認めなかったことは社会通念に照らし妥当性を欠き、裁量権を逸脱していると判断した。
 鈴木さんは区に対する百万円の賠償請求や、不服審査請求を棄却した都の決定の取り消しも求めたが、いずれも退けられた。
 鈴木さんに対する移動介護費の減額をめぐっては、〇六年の東京地裁判決が区の減額は違法と指摘したが、支給の根拠となった身体障害者福祉法の廃止を理由に「訴えの利益がない」として請求を退けた。
 判決後の会見で、鈴木さんは「障害者に正しい判断をしてくれた。これから区との話し合いで解決する」と話し、原告代理人も「障害者制度改革に大きな影響を及ぼす、意義ある判決」と評価した。
(後略)

参考リンク

『鈴木敬治さんとともに移動の自由をとりもどす会』
http://suzukikeiji.hp.infoseek.co.jp/index.htm

このホームページに掲載されている、鈴木氏のエッセイを読んでほしい。彼の願いは、ほんとにささやかで、あたりまえのものだと思う。こんな願いも実現できないほど、日本は貧しい国なのか。こんなところも歳出削減しなければならないのか。

『こんな足だけどいろんなところに行ってみたいのさ』
http://suzukikeiji.hp.infoseek.co.jp/suzukihitori.htm

「歳出改革による痛み」(http://d.hatena.ne.jp/dojin/20050923#p1)より抜粋。もう6年以上も争っているわけか。争い続けながら、サービスを受け続け、住み続ける。正直すごいと思うけど、その何十年の積み重ねの上に、今の日本の障害者福祉制度と福祉サービスがある。

二つ目。
「介護職の医行為実施へ試案を提示―厚労省検討会」
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/28767.html

厚生労働省の「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(座長=大島伸一独立行政法人国立長寿医療研究センター総長)は7月29日、3回目の会合を開いた。この中で同省は、介護職員がたんの吸引と経管栄養を実施する施設の種類や、実施に当たって必要な研修内容などを盛り込んだ試案を提示した。

■実施施設に特養、老健、GHなど
 会合で厚労省が提示した試案は、「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方についての今後の議論の進め方及び具体的方向」と、「介護職員等によるたんの吸引等の試行事業」。
 このうち前者では、介護職員が手掛けられる医行為として、「たんの吸引(口腔内と鼻腔内、気管カニューレ内部。口腔内については、咽頭の手前まで)」と「胃ろう・腸ろう・経鼻の経管栄養(胃ろう・腸ろうの状態確認や、経鼻経管栄養のチューブ挿入状態の確認は、看護職員が行う)」を提案。

 また、たんの吸引などを実施できる職員の範囲は「介護福祉士その他の介護職員とし、特別支援学校では教員のみ」と定めているほか、実施できる施設として、特別養護老人ホーム老人保健施設グループホーム、有料老人ホーム、障害者支援施設(通所施設及びケアホームは該当。医療機関である場合は除く)や、訪問介護事業所などを挙げている。

■基本研修として50時間の講義も
 後者では、「たんの吸引と経管栄養の両方を行う場合は、基本研修として50時間の講義と、それぞれ5回以上の演習を行ったうえで、医師の指示を受けた看護師の指導のもと、実地研修を行う」などの内容を盛り込んだ研修カリキュラム案が示された。カリキュラム案には、▽患者(利用者)ごとの個別計画の作成▽介護職員を受け入れる場合には、介護職員数人につき指導看護師を1人以上配置▽指導看護師は、臨床などで3年以上の実務経験を持ち、指導者講習も受講している―など、実地研修に必要な基本要件も明記されている。

試案に対し、日本介護福祉士会副会長の内田千恵子氏は、実施できる職員の範囲が「介護福祉士その他の介護職員」と幅広く設定されている点について、「ホームヘルパー介護福祉士に限るべき」と主張したが、試案を支持する構成員が大半を占めた。また実施施設については、訪問看護事業所や介護療養型医療施設まで範囲を拡大すべきとする意見が上がった。基本研修については「50時間で足りるのか、とも感じる」(因利恵・日本ホームヘルパー協会会長)、「24時間2交代で在宅介護しているヘルパーにとって、『50時間を座学で』となると、その時間は取れない」(橋本操NPO法人さくら会理事長)など、構成員の間でも見解が分かれた。

■医行為からの除外をめぐる議論も
 また、日本医師会常任理事の三上裕司氏は、たんの吸引や経管栄養について、改めて医行為から外すことを提案したが、政策研究大学院大教授の島崎謙治氏は「医行為から外してしまえば、誰でもたんの吸引などができるということになりかねない」と指摘。他の構成員からも、慎重に議論すべきという意見が多く上がった。

参考エントリ

メモ:ALS、地方行財政、資格
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20100706#p1