http://mainichi.jp/select/news/20121003k0000m010092000c.html
三井辨雄(わきお)厚生労働相は2日、生活保護をめぐる自身の発言について訂正する記者会見を開いた。初入閣の三井氏がスタートからつまずいた形で、今後の国会答弁などに不安を残した。
三井氏は2日の閣議後の会見で、全額無料の生活保護の医療費に関し、「全部無料はあり得ないということも含めて検討したい」と述べ、自己負担導入の容認ともとれる発言をした。記者からただされると「全額無料廃止ではない」と修正。さらに、2日夕に再度、会見を開き、「発言の趣旨は、さまざまな意見を聞きながら医療扶助の適正化を強化していく必要がある旨を述べたものだ」と釈明した。
前に医療扶助および生活保護受給者の医療負担の自己負担化についてつぶやいたので、それを一部修正・追記して転載。
「医療扶助も濫用防止と無料での医療受給権確保のためのフリーアクセス制限などがありえる」と書いたがスウェに来て以来たまに考える。スウェは日本のようなフリーアクセスはなく我が県は予約制の一般医受診の他、市内に数箇所予約なしで行ける一般医の診療所がある。専門医への直接アクセスは不可。
専門医への直接アクセスや選択肢がないのは、日本の医療になれた身からすると不便極まりないし不安も感じる。一方で、年間の医療費上限は10000円ほどと低額になっており、それ以降は無料(薬は20000円ほど)。上限までの一回ごとの受診料は原則定額制で1500-3000円ほどか。
厳密な議論ではないが、日本で老人医療費無料化が廃止されたように、おそらくフリーアクセス(コンビニ的感覚での医者利用@日本)と低い自己負担(@北欧やイギリスやカナダのNHS)には一定のトレードオフがあり、いいとこどりをすることはどの国でも財源制約上難しいのではないか。(これは医療政策研究者にはよく知られた事実だと思うが、今は文献参照する時間ないのでスルー)
生活保護の医療扶助も、制度上はフリーアクセスではないようだが、「自己負担無料」であることによる需要サイド、供給サイドのインセンティブからの過剰診療が問題視されてるようだし、だから医療扶助の生活保護からの切り離し(国保への組み入れ?)や自己負担導入の議論がなされているのだろう
生活保護受給者への自己負担導入は、医療ニーズが高い受給者の受診抑制を生むのはおそらく間違いない。「受診の有無にかかわらず標準的自己負担額を保護基準額にを上乗せした上で自己負担導入」という林正義氏のより穏当な提案(日経経済教室2011.12.26)でもこの問題は避けられない。
折衷案として、アクセスは不便だが無料(or上限が低額)で質が担保された(公的or民間)診療所と、現行制度のフリーアクセス&3割負担の併用はどうか。これを万人に適応すると色々摩擦があり見通しわからなくなるが、生活保護受給者を対象にこうした制度にすることはできないか
「万人に適用すると見通しわからなくなる」というのは、万人に対して1.アクセスは不便だが無料(or上限低額)の診療所と2.現行制度下のコンビニ的3割負担診療所の両方を保障するのは個人的にはいいことだと思うが(日本の3割負担や高額療養費は低所得者層や高医療ニーズ層には負担が重いという立場なので)、現行の病院・診療所にとって無料診療所は脅威だろうし、医療サービスの二極分化に繋がる可能性もありそう。
なので現行制度を前提とした上で、生活保護受給者には、非受給者と同様どの病院にも3割負担で通ってよいことにして、かつ指定診療所への無料アクセス(ただし予約制や厳しめのレセプトチェックなどの制約あり)も保障する、というのはどうだろう。この場合、受給者の(3割負担の)病院へのアクセスをあまり悪化させないように、林案のように一定額保護費に上乗せしてもいいし、そこに医療ニーズ判定を導入することも、行政的に可能ならばありうるかもしれない。
生活保護受給者の医療扶助の問題は、非受給者の低所得者や医療ニーズの高い人々の医療アクセスや医療費負担の問題とも地続きの問題なので、フリーアクセス&3割自己負担&高額療養費制度という日本の医療サービス利用のあり方そのものをどう評価するかという難題とも関係してくるので、今後も考えていきたい所存。
思いつきなので、玄人&素人の皆さんのフィードバックがほしいところです。