研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

経済学と社会学の幸福な協働

偉大か偉大でないかにかかわらず、社会科学者というのは、若いころに細かい技術的な仕事をこつこつして、年をとるとやれ資本主義だやれ国家だやれ文明だと、大きいなことを言い始める人が多い。しかしこの人は逆だったのだ。

1990年に福祉国家論の記念碑的作品を打ち立てたエスピン・アンデルセンは、その後もこつこつと社会学や社会政策学の一流ジャーナルに論文を書き続け、60歳を超えた去年にはついにInternational tax and public financeという公共経済学の一流ジャーナルにも論文を掲載している。

エスピン・アンデルセン ホームページ
http://www.esping-andersen.com/

"Childhood investments and skill formation"
http://www.springerlink.com/content/53h23910v815gt77/

追記:ただ、この論文が載った号は福祉国家についてのspecial issueのようなので、招待論文ということか。アトキンソンをはじめ、面白そうな論文がただで読める。
http://www.springerlink.com/content/pmq5222mwhgg/?p=b4ef3741f68f42d6952d9ee8f0992f65&pi=0

近年は特に家族政策・児童・教育政策の研究に力を入れているようだ(すんませんノーチェックでした。これから時間みつけて読みます)。

上記の邦訳本は、そんなエスピン・アンデルセンの近年の研究成果と政策提言をコンパクトにまとめた本のようだ。新奇な発見や高度な分析手法があるわけではない。優れた経済学・社会学の実証研究の蓄積によって明らかにされた経済的・社会的事象やその因果関係が、彼の確かな社会学的視点によって有機的に結び付けられ、分析される。そして、それらの事象が生み出す様々な問題に対する説得的な解決の方向性が示される。

という所感が正しいのかどうか、今後論文も含めてチェックしてみなければ。べたぼめよくない。