研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

ベーシックインカムのコメントにたいするメモ

というのは、普通の人間は「人の役に立っている」と思われたいのが人情だからであり、また税金で生活しているだけの人が世間から敬意の目をもって見られることはないだろうからである。

http://d.hatena.ne.jp/qushanxin/20090622

私も、ベーシックインカムの現時点の導入可能性については懐疑的だ。導入を目指すにしても、段階的な試行錯誤や実証的な検証がまだまだ必要だろう。

だが、ここで引用したような価値観に対抗するためにこそ、ベーシックインカムという発想が生じたということを踏まえた上で、賛成するなら賛成する、批判するなら批判するべきだろう。この発言をもって「こういうリアルな感覚」(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-2dc2.html)と評価するhamachan氏も、同様である。

より正当でかつ生産的な批判は、例えば、

ベーシックインカムという考え方は、「普通の人間は人の役に立っていると思われたいのが人情」とか「税金で生活しているだけの人が世間から敬意の目をもって見られることはない」という、ある種の人々にとっては生きづらい価値観が支配している社会を克服するために提案されているらしいけど、やっぱりそういう人情や敬意は普遍的だし自然だしリアルで克服し難い(あるいは克服する必要がない)から、ベーシックインカムなんてダメだ。

というものだ。これならば(私の社会哲学的立場にとっては哀しいことではあるが)いくぶんかの社会的事実を含んでいると考えられ、重要な論点だと思う。