研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

メモ:生活保障の再生とアクティベーション(宮本太郎)

生活保障の再生とアクティベーション(宮本太郎)
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/10042601.html?id=nl

ちょっと前のエントリで言及したアクティベーションベーシックインカムについては、

2.底上げ型所得保障と給与比例型の所得保障との連動
すべての人が安定した職に就くことが難しくなっている中では、よりフラットな底上げ型の所得保障(子ども手当て、最低保障年金)の比重が大きくならざるを得ませんが、バラマキ型・ベーシックインカム型の所得保障は持続性の上で決して好ましくありません。就労所得を引き上げるアクティベーションと並行する形で、給与比例型の保障と底上げ型の所得保障とを連携させていくことが重要です。それがないと、最低保障年金がただひたすら膨らんでいくことになります。

とのこと。

また、スウェーデンの保育サービス(就学前教育)についても言及していたので抜粋。

スウェーデンでは就学前教育の15%程度を民間が担っていますが、それらは自治体の保育所と同じ水準の補助金を行政から受け取っていて、賃金水準も同じです。そうすることで、コスト面ではなくサービスの質をめぐる競争を実現し、全体的なサービスの質向上を図っているのです。

そういえば、私がちょっと前に訪れた高齢者施設*1精神障害者グループホーム(前者は市が運営、後者は民間が運営)において聞いた話でも、これらの公共サービスは数年ごとに行政評価がなされ、パフォーマンスが悪いと民間委託されるという。

ただし、民間委託されても、現場スタッフの給与水準や労働水準はまったく変わらないという*2。ここらへんは、行政費用の削減(つまり人件費の削減)が主目的となっている日本の指定者管理制度とは全く違いそうだ。もちろん、労働組合の影響力の違いや賃金決定方法の違いなどもあるだろう。こういうところはよくわからないが、いずれ時間があるときにフォローしたい。

関連エントリ:
ベーシックインカム負の所得税の関係
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20100514#p1

*1:厳密には、スウェーデンでは現在、法律上は「高齢者施設」はなく、「特別な住居」というらしい。例えば伊澤(2006)「スウェーデンにおける医療と介護の機能分担と連携―エーデル改革による変遷と現在―」(http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/18095204.pdf)を参照。ただ日本と比較するならば法制度的にも実態的にも特別養護老人ホームに一番近いかと思う。もちろん、住居としての平均水準は全然違うが。ただ住居の平均水準が違うのは、おそらく高齢者施設や福祉施設だけに限った話ではなく、普通の住居全般について言えるかもしれない。

*2:ちなみに後者のグループホームは、入所者とスタッフやマネジメントサイドの繋ぎ役として、スタッフに精神障害者を雇っていた。ただし、スウェーデンでもこういう形の精神障害者の当事者参画はまだまだ遅れているとのこと。