研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

平成23年11月9日 第48回社会保障審議会医療保険部会資料

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001u6qr.html

(議題)
1.次回の診療報酬改定に向けた検討について
2.給付の重点化・制度運営の効率化について
3.社会保障・税一体改革成案における高額療養費の見直し等のセーフティネット機能の強化、給付の重点化について

議題1について
資料1 平成24年度診療報酬改定の基本的認識、視点、方向等(案)(PDF:298KB)
資料2 過去の診療報酬改定の基本方針における視点等(PDF:125KB)
資料3 社会保障審議会医療保険部会・医療部会における各委員の発言要旨(PDF:373KB)

議題2について
資料4 給付の重点化・制度運営の効率化(PDF:1402KB)

議題3について
資料5 高額療養費の見直しと受診時定額負担について(PDF:496KB)

資料4と資料5は重要そうです。

平成23年11月9日 第47回社会保障審議会医療保険部会 議事録と資料

議事録
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uq26.html

資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001suet.html

(議題)
1.社会保障・税一体改革成案における患者負担に関する事項について
2.医療費適正化計画について
3.次回の診療報酬改定に向けた検討について

<資料>
議題1について
資料1 社会保障・税一体改革成案におけるその他の患者負担に関する(PDF:298KB)

議題2について
資料2 医療費適正化計画について(PDF:516KB)
参考資料 医療費適正化計画について(PDF:900KB)

議題3について
資料3 平成24年度診療報酬改定の基本的認識、視点、方向等(案)(PDF:297KB)
資料4 過去の診療報酬改定の基本方針における視点等(PDF:130KB)
資料5 社会保障審議会医療保険部会・医療部会における各委員の発言要旨(PDF:352KB)

議事録を丹念に読み整理するヒマがないのでランダム(嘘)に岩本委員のコメントを抜粋

○岩本委員 現在の医療費適正化計画に盛り込まれています健診率の向上と病床の機能分化という柱は、どちらも大切なもので進めていかなければいけないということで合意が得られていると思うのですけれども、具体的にどうすれば効果的かということがわかっていないので、いろいろ努力しているのだが、なかなか進んでいないという現状だと思います。
 それでも、こういう形で取り組むことで数字はわずかながら改善が見られるという状況ですが、ただ、このまま行くと目標には達しないということですから、第2期の計画を立てるときには、そのことを踏まえた対応が必要だろうと思います。このまま同じような形で続けるということでいいのかどうかということが問われてくるだろうと思います。
 1つは、効果的な手段がないのかということをもう少し検討して、国の方でそういうことが見つかるのであれば、それを打ち出して全国展開していくということが必要だと思うのですけれども、それは現在でも、担当者はいろいろと一生懸命考えてやっているのですが、見つからないということで、非常に難しいなとは思います。
 ということで、計画が余り進まないということも場合によっては考えて、それでもシステムがおかしくならないようなことをいろいろ手を打たなければいけないだろうと思います。
 それでちょっと心配していますのは、病床の数を減らすと、先ほどお話が出ましたように、入院難民が生まれるのではないかという懸念は確かにあるかと思います。これから高齢者がどんどん増えていくということになりますので、計画はきちんと立てておいて、将来にわたって入院が必要なニーズに関してはきちっと応えられるような供給が確保できるような計画となるということが必要だろうと思います。その辺りが裏でしっかり計算しているのかどうかわかりにくいということが言えます。
 1つ、先的に向けて大きな問題というのは、やはり高齢者が増えていって、死亡数も増えていってということで、ベッドが足りなくなるのではないかということで、在宅医療を推進するということが、ひとつそれに対しての対応になるかと思います。これも重要だと言われていますけれども、今のところ、在院日数の短縮の中の1項目にこういうふうに入っているのですが、これをもう少し大きく取り組むということで、私としては、もう一つ大きな柱ぐらいに立てて考えるということもあるのかなと考えております。
 すなわち、これは日数の削減とか、病床の削減とかというところの数値目標だけでは取れない部分もあるかと思っております。
 柱はこういう2つの柱だけではなくて、もっとあってもいいはずで、医療費適正化の取組みとかはもっといろいろあってもいいはずなので、第2期計画の方では、もっといろいろなアイデアを出してくるということがあってもいいのかなと思っております。

宮台真司の「小さな政府、大きな社会」と神野直彦の「財政が支える社会システム」の関係についてのつぶやき

ツイッターで2つ3つつぶやこうと思ったら、10つぶやきくらいになって、その後、フローレンスの駒崎さんとのやりとりにもなったので、こちらに記録。今後は、長くなりそうならば、以前のように、最初からブログに書くように努めよう。

以下のつぶやきは、基本的にマル激での宮台真司氏、神保哲夫氏、そしてゲストである財政学者の神野直彦氏のやりとり(http://t.co/CcV2Uv7W 自分はメルマガよりテクストを読んだ)をネタにした、「財政と社会の関係について考えたり解釈するための枠組み」についての「空中戦」である。

本当は、理想をいえば、こんな空中戦ではなく、どのような「社会」観に立つとしても、

1.マクロ経済・財政状況・労働市場少子高齢化・家族の変遷などを動態的に把握しながら、
2.それらに対応して、どういう哲学の下でどう財政の仕組みを変更しなければならないか、
3.変更した場合に具体的にどう「社会」に変化が生じ得るのか

ということを、これまでの研究の蓄積や現場の経験に基づいて考察しなくてはならないと自分は考えている。とくに、3あるいは2と3の間のフィードバックなどについての実証的検証(に基づいた考察と政策提言)が決定的に不足していると感じている。それを今の自分ができていないのは本当に残念。

様々な過去の研究の蓄積や現場の声をかき集め整理しながら、そういう作業を行うこと自体は不可能ではないと思っている。ただ残念ながら、そういう作業は自分の研究業績にはならないため、メシの種にはならない。他にも重要な作業はたくさんあるので、そのこと自体に不満はないが、力不足とフラストレーションを感しながらツイッターでぼやくことになる。

前置きが長くなったけど、以下つぶやき。読みやすいように修正はしている。

マル激の神野氏と萱野氏の回読む http://t.co/m2t52wGo 尊敬する神野氏、スウェは医療無料ではないし(自己負担上限は高額療養費制度よりかなり低い)、「家具はパーツでしか売られていない」てIKEAのこと?w管野・宮台氏の話ではオールマイティ言説の功罪について考えた

大竹氏が指摘する日本人の「市場を嫌い、政府を嫌う」という市場観・政府観 http://t.co/3IrNpmk1 は、宮台的な「小さな政府、大きな社会」という(ほぼ)あり得ない理想郷を待望する感覚と通じるものがあるかも。市場も政府もダメだから、「なんとなく社会」でいこう。

神野氏の回 http://t.co/CcV2Uv7W 神保氏が宮台氏のような発言をしてる。「社会システムが小さくなってしまうと、自分たちの生活も守れなくなるから、政治に対して要求が肥大するばかりです。日本では共同体自治の機能がなくなり...」。神保氏ってこういう人だったっけ...

13年前の神野直彦氏の「システム改革の政治経済学」 http://t.co/Z8viGeZN の導入部p11でも書いてるように神野氏の「社会システム」は、「政治システム」からの「財政」というチャネルを通じて共同体的諸関係が維持される関係にある。神保氏とは「社会」認識がだいぶ異なる

マル激ファンなので批判はこれくらいにして、神野氏がゲストなのに議論されなかったポイントを。宮台氏はフローレンスの病児保育を「市場と社会がうまく接続」した例として取り上げてた。ただし、こういう領域に政治と財政を介在させることこそが神野氏的な「社会システム」論と共同体維持の考え方。

つまり神野氏の「政治と財政により支えられる社会」と宮台氏の「小さな政府、大きな社会」は、政治イデオロギーとしても政策的帰結としても相当の違いが生じる可能性がある。そしてそれは古典的な「大きな政府か小さな政府か」の論争と実質そんなに変わらない。続

ただ、宮台氏の「小さな政府、大きな社会」論では財政がどういう位置づけにあるか不明なので実は神野氏の社会論と対立的でない可能性もある。それはウォッチャーとして今後に期待。いずれにせよ、これらは日本的準市場型社会サービスをどこまで維持・拡張するかという話と密接に関連するので大切な話。

日本には特に医療・介護(と保育)の分野で、かなり細かい領域に渡る、公的・民間組織の試行錯誤の蓄積と報酬制度に代表される財政の枠組みがある。神野タームで言えば、財政を媒介とした社会システム維持の歴史は決して浅くない。NPO社会的企業によるそこから漏れた領域での試行錯誤もある 

なので、その社会領域をこれからも政治システムが財政を通じて支えていくという意思表示と財政的裏づけと、その枠組みの腐った部分・機能しなくなった部分を改革していくという、2つの作業を、低成長と高齢化の制約下でやらなければならない。低成長は制約でなくなるといいなー。

だが前段ツイートの各パーツを違う形で組み合わせると、低成長と高齢化の制約(あと忘れたけど借金という財政的制約)があるので、今の枠組みの腐った部分は抜本改革=財政による社会システム維持機能を弱めなければならない、という認識に。つまり前者が左派。後者が右派。間にグラデーション。

ここで、政府=財政、社会=共同体の生活保持機能と定義すれば、どこにも、「小さな政府、大きな社会」なんていう選択肢はない。政府(財政)を小さくすれば、社会は小さくなるし、政府(財政)を大きくすれば、社会は大きくなる。ただし市場を活用できる人には逃げ場はある。

ここからはフローレンス駒崎氏とのやりとり。時系列上やりとりが錯綜しているところは適当に整理した。

駒崎氏:
「小さな政府、大きな社会」って、そういう意味なのかな。準市場化は大きな社会化になるのでは?政府=財政っていう前提は違うかもよ。コムスンが政府じゃなかったように。小さな政府、大きなプラットフォーム、それを利用する社会セクター、というような関係性は?

自分:
よくある「政府の大きさ」の定義は財政規模なので準市場拡大は「大きな政府大きな社会」路線です。ミヤディが「政府」を違う定義で考えてて準市場化の拡大を「小さな政府大きな社会」と位置づけるならそれは実現可能ですがそのあたりがイマイチわからないですね。

駒崎氏:
大きな政府」の定義かな。公務員数の増加を大きな政府と考えるならば、準市場化の切り口は小さな政府になるよね。だから僕は「小さな政府・大きな社会」派かなぁ。

自分:
政府財源を用いた公的サービスや準市場の拡充なしに今以上に「大きな社会」「安定した地域コミュニティ」を実現することは特に医療・介護・教育・保育ではかなり困難と思います。財源減らせば穴だらけの小さな社会とそこで踏ん張る私的事業者という構図になるかと

自分:
国際比較の研究では「政府の大きさ」はまず「財政規模の対GDP比」なので準市場か公的供給かは問われませんが改革の文脈だといろんな意味で使われますからね。ただ準市場化も財政規模拡大なのでミヤディのようにそこをふわっとした感じにすると議論が混乱します

駒崎氏:
準市場の拡充なしに、大きな社会実現はきつい、というのは賛成。その財源のためにも増税は賛成。ただし医療や福祉もザルな部分はかなりあるから支出削減もセット。そんなパッケージでOK?

自分:
改革で予算配分の仕方が問われるのは必須でしょうね。問題は今も議論してるんでしょうが「どこが削減可能か」の見極め難さとそれと引き換えの「拡充規模・拡充の仕方」の見通し難さがあって、それぞれの政治的思惑もあって、中々先が見えにくいということでしょうか

自分:
自分もフォロー甘いので自信もって言えないですが、今後こういう財源でこういう規模でこう改革をしてこうなりますという政治的たたき台なしで(まぁいちおうポンチ絵っぽいのはありますが)、その場その場で厚労省有識者や利害関係者が議論している状況にみえます

自分:
なので「小さな政府、大きな社会」というスローガンを認めるにしても、その先の「『大きな社会』実現には、こういう財源、こういう準市場、こういうルール、こういう民間企業やNPOで、こういうふうにやっていきましょう」くらいの青写真を掲げてほしいなぁと。

自分:
ぶっちゃければ、「小さな政府、大きな社会」という議論をするのならば、そういう人たちはみんな駒崎さんの論をそのままパクってくれるだけで、議論のステージが一つ上がると思います。メタ的な「社会」論や「共同体」論はもうそろそろいらないんじゃないかなと。

自分:
次のステージとは公定価格の是非の議論や民間規制の議論など「準市場のあり方」の議論。そこで財政規模の議論ももっとクリアに出てくるし「社会」像の議論も具体性でてきます。既存の制度前提とした審議会レベルの細い議論はまた少し次元が違うけどだいぶ近くなる。

自分:
ミヤディがそういう議論をできないはずはないしミヤディの議論についていける賢い人たちならみんなついていけるでしょう。もう余裕ないんだからそろそろ「社会」の現実や既存の制度との接続可能性も含めた現実的な議論をしてほしいと1ファンとして思ったまでですw

駒崎氏:
なるほど。勉強になります。とりあえず僕は保育分野で準市場化改革を推進して、それを皮切りに社会保障改革に繋げていきますね。どこかでこういう話をガチでできる場があると良いのだけれど。

その後のおまけ。

シノドス芹沢一也氏:
ご協力しますよ♪ @Hiroki_Komazaki @dojin_tw どこかでこういう話をガチでできる場があると良いのだけれど。
13 hours ago

駒崎弘樹氏:
@synodos @dojin_tw おぉ、芹沢さん!w ありがとうございます!

シノドス芹沢一也氏:
年末に座談会でもして、来年頭にシノドス・ジャーナルにアップするとか。たとえば、飯田さんと湯浅さんの続編への期待も高いし、湯浅さんと駒崎さんとの絡みもみたいし。+社会保障の専門家とか。そのラインでどうでしょう? @Hiroki_Komazaki @dojin_tw
13 hours ago

駒崎弘樹氏:
@synodos @dojin_tw それで大丈夫ですー!ありがとうございます!

自分:
ツイッターから渾身のガヤをいれさせて頂きますwRT @synodos: 年末に座談会でもして、来年頭にシノドス・ジャーナルにアップするとか。たとえば、飯田さんと湯浅さんの続編への期待も高いし、湯浅さんと駒崎さんとの絡みもみたいし@Hiroki_Komazaki @dojin_tw

シノドス芹沢一也氏:
@dojin_tw さんの「渾身」てすごそうですね!RT @dojin_tw @Hiroki_Komazaki ツイッターから渾身のガヤをいれさせて頂きますwRT @synodos: 年末に座談会でもして、来年頭にシノドス・ジャーナルにアップするとか。たとえば、飯田さんと湯浅さん

駒崎氏:
@synodos @dojin_tw それで大丈夫ですー!ありがとうございます

シノドス芹沢一也氏:
@Hiroki_Komazaki @dojin_tw 了解!企画立てますね。

関連のありそうな過去のエントリ

『日本の難点』:「大きい社会」を支える政府のあり方についてメモ
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20090425#p1
病児保育を巡る市議と病児保育NPO経営者のやりとり
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20100708#p1
公的保育サービスに関する2つの論点:価格自由化と一般財源
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20101101/p1

平成23年10月31日第83回社会保障審議会介護給付費分科会資料

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001tonu.html

議事次第(PDF:95KB)
資料1通所介護の基準・報酬について(PDF:638KB)
資料2リハビリテーションについて(PDF:675KB)
資料3予防給付について(PDF:510KB)
資料4居宅介護支援・介護予防支援の基準・報酬について(PDF:1347KB)
資料5−1中央社会保険医療協議会と介護給付費分科会との打ち合わせ会における主な意見(PDF:214KB)
資料5−2診療報酬と介護報酬の同時改定に向けて(PDF:2422KB)
木村委員提出資料(PDF:299KB)
社会保障審議会介護給付費分科会委員名簿(PDF:73KB)

木村委員(一般社団法人日本介護支援専門員協会会長)提出資料の冒頭部は以下の通り。

日本の介護保険制度は、世界に類を見ない優れた制度です。
その評価の核となっているのは、ケアマネジメントとケアマネジャー(介護支援専門員)
が制度に組み込まれていることです。ケアマネジャーは、利用者の幸せづくりと実現したい
生活を支えるため、介護保険制度の要として、この日本にケアマネジメントを確立するべく
業務をしています。
また、日本の介護保険制度には、「自立支援」の理念があり、それを行うためにケアマネジ
メントが導入され、ケアマネジャーが配置されています。居宅におけるケアマネジメントは、
要介護者・要支援者の誰もが公平に受けることができるように、利用者負担は0割(負担な
し)で、この費用は保険で全額を賄う10割給付の仕組みで運営されており、他の介護保険
サービスとは別の性格のものです。財源論に左右されることなく、今後もこの仕組みが堅持
されることを強く要望します。
ケアマネジャーは、平成 18 年改正介保険法施行において専門職として唯一、資格の更新制
度が導入され、私たちもその必要性を認識して努力を重ねてきました。
ケアマネジャーの質の向上を巡っては、様々な場で様々な指摘がされていますが、ケアマ
ネジメントプロセスをきちんと踏み、利用者の自立支援に資するケアマネジメントを実践し
ているケアマネジャーが数多く全国にいることも事実です。また、その後押しをするために
努力している事業所・施設も数多くあります。限られた財源の中で、ケアマネジメントに関
する報酬・基準を検討するにあたっては、こうした事業所・施設に対してより手厚く評価し
て頂くことを強く要望いたします。
なお、ケアマネジメントの質の問題、ケアマネジャーの資質向上や資格制度、研修のあり
方については、別途検討される場が設けられると伺っていますので、ここでは割愛いたしま
した。

平成23年10月31日第7回医療計画の見直し等に関する検討会資料

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001tfc5.html

議題
在宅医療の方向性について

<配付資料>

○資料
在宅医療について
資料(PDF:3144KB)

この資料他でもみたな。

2011年10月12日 第46回社会保障審議会医療保険部会議事録

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001svys.html

○議題
1.医療保険財政の現状について
2.社会保障・税一体改革成案における高額療養費の見直し等のセーフティネット機能の強化、給付の重点化について
3.その他

例によって岩本氏の部分を抜粋。

○岩本委員 主に保険者の方々から保険料を上げる余地がないという趣旨の御意見が出たと思うんですけれども、公費で頼れるかというと、結局公費は税金で払わなければいけないわけですから、国民から見れば、保険料を払って税金を払ってということになります。この保険料というのは大部分が保険の給付に回ってくるということで、その給付が目に見えているということで負担の理解を求めるという形になっていますが、税金の方はかなり政府が信頼されていない部分もあって無駄に使われているのではないかということが言われておりますので、もし国民の方が医療保険料をこれ以上払う余地がないぐらい苦しいということであれば、税金を上げる余地も更にそれ以上ない。そうすると公費をつぎ込む余地もないという考え方もできるのではないのかなと個人的には思っております。

○岩本委員 公費負担が選択肢にあるかどうかという御意見が出ていますので、それに関連して私の意見を述べさせていただきます。
 この案がそもそも一体改革成案の中で出てきておりまして、そこで公費負担に関して縛りがかかっているということで、しかもこれは政府与党の決定という重みがあるものですから、それを覆す選択肢を提示するとなれば、具体的にどうするのかというところを出していかなければいけないということだと思います。既に消費税は一体改革の中で2015年をめどに5%分引き上げるとかなり大きな増税を入れているんですけれども、その中にこの部分が入っていないという現状なわけですから、こちらの方の財源を見つけるとなれば、消費税の今の考えられている財源あるいは既存の歳出を切り詰めてそちらに回すとかということを考えなければいけない。そうでなければ、5%に更に上澄みする何らかの形の増税を考えなければいけないという、そういう構造になっているんだと思います。
 意見としては、一体改革のところにも異議ありということで、公費負担増でやればいいじゃないかという御意見がいろいろ出るというのは勿論いいことだと思うんです。これは私個人の意見ですけれども、この場としては、一体改革の結論というか、成案を受けてそれを少しでもよくするという形で、あるいは具体的になっていないところを具体化するということでやっていかなければいけないのではないかという認識でおります。
 ただ、私は事務局の意見に必ずしも全部賛成ということではなくて、前回申し上げましたけれども、まず、現状があって、そして事務局案としては高額療養費の給付を広げて、その変わりに受診時定額負担を導入するという案が出て、私は後半の受診時定額負担の分に関しては、保険料を上げた方が国民はもっと納得しやすいのではないでしょうかという問題提起をしたわけです。そういうことで訴えれば、国民のかなりの方は納得していただけるかなと思っております。ただ、一体改革全体の文脈の中では、これは実現が非常に難しいことになっています。
 どういうことかというと、前半部分のところでこれで給付費が増えますので、財政影響の方でそれに連動して公費が増えるという形で公費負担の増が計算されているということになっているかと思います。公費負担というのは給付費と連動している部分が相当あるわけですから、そうすると、一体改革で出ている形で、その分どこか公費で削れということになれば、そこをいじらない限り何らかの形で給付費を減らさないと公費負担が減らないということになるわけです。それでもう選択肢が狭められているわけです。保険料を上げるというのは給付費の方には跳ね返りませんので、公費負担を下げるには何も働かないということになります。
 ですから、私が前回問題提起した高額療養費の方は給付をする。その分を保険料で面倒を見るといった場合には、給付費が増えて、それに連動して公費負担が増えてという形だけになってしまうので、そうすると一体改革で決まった公費負担の縛りを満たさないということで、却下されることになるということです。
 ただ、私はそれでは諦めなくて、そこは公費負担と給付費が連動しているという、現行の仕組みをいじらなければ、ということですから、もしこの制度改革、定額負担が国民が納得を得られるのかどうかということを正面から問うのであれば、そこも改革の選択肢に入れて、何らかの形で公費負担の仕組み自体を見直して、そこで財源をつくるということも考えられなくもないということをとりあえず申し上げたいと思います。
 もしそこをいじらないままでやっていって、このままいった場合、将来にもまた何か公費負担増の改革がもし必要だとなった場合には、なかなか財源が付きませんから、そうするとやはりどこかで公費負担を削ってという話になると、給付費を何らかの形で削ってとかという、そういう議論に結局なってしまうということかと思います。
 定額負担というのは非常に大きな問題だと思うんですけれども、今回の御提案でなかなか代案がないというところは、公費負担の縛りで決まっていると先ほどの説明のとおり理解しているんですけれども、尾っぽが胴体を振り回しているような気がしないでもなくて、そういう財政の公費負担の縛りによってこういう定額負担という大きなものが、入る入らないが決まってしまうというか、そこに選択肢としては行き着くしかないという形になっているというのは本当にいいのかなと。こういうことがまた繰り返されないのかなという、そういう思いでいるということです。
 ただ、選択肢は3つですけれども、定額負担は、前回申し上げたように、これは最後の手段だと言っていますが、ただ、定額負担に必ずしも反対というか、完全に反対という話ではなくて、現状のままですとやはり高額療養費の負担というのは非常に重いわけですから、これは何らかの形で変えなければいけないということで、選択肢は3つありますと。いまよりは厚生労働省さんが提案した案というのがまだましだと。それよりもいいものがあるかどうかということで探していくということだと思いますので、定額負担に反対だからといってすべての今の案が御破算になって、現状維持ということの議論の展開は避けた方がいいのではないかなと思っております。

平成23年10月31日第36回社会保障審議会児童部会資料

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001to11.html

<配付資料>

資料1
社会保障審議会児童部会委員名簿(PDF:89KB)

資料2
平成24年度雇用均等・児童家庭局概算要求の概要(PDF:394KB)

資料3−1
雇用均等・児童家庭局における震災への対応について(PDF:711KB)

資料3−2
平成23年度厚生労働省第二次補正予算の概要(PDF:28KB)

資料3−3
平成23年度第三次補正予算(案)の概要【雇用均等・児童家庭局】(PDF:166KB)

資料4
地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(地方分権一括法)について(PDF:359KB)

資料5
「社会的養護の課題と将来像」に基づく施策の推進について(PDF:505KB)

資料6
平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法の概要(PDF:543KB)

資料7
社会保障・税一体改革成案(平成23年6月30日政府・与党社会保障改革検討本部決定)(PDF:1106KB)

資料8−1
子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめについて(平成23年7月29日少子化社会対策会議決定)(PDF:981KB)

資料8−2
子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめの概要(PDF:1352KB)