研究メモ ver.2

安藤道人(立教大学経済学部准教授)のブログ。旧はてなダイアリーより移行しました。たまに更新予定。

過剰で貧困な想像力

生きている脳
http://blog.m3.com/Visa/20070308/2

「最期にどういう気持ちで亡くなって行ったのか、ご本人以外の誰にもわかりません。」

と書いておきながら、

「自分だったら、気が狂うのではないかと思います。」

と安易な想像をしておいて、さらには赤太字で

「地獄ではないでしょうか。」

なんて書いて、極め付けには、筒井康隆(1筒井康隆ファンとして恥ずかしい笑)の小説まで長々と引用して

「ALSの最期の状況に通じるものがありませんか。」

とはなにごとだ。なにごとだってのも変だけど、十分すぎるほど、「ご本人」でもないのに貧困な想像力をめいっぱい働かせて代弁しているぢゃん。。。

今度なにかを書くときは、貧困な想像力と無知を補うべく、きちんとフィールドワークとか下調べとかして欲しい。別に貧困な想像力や無知を恥じることはない。想像力が貧困であることなんて、一部の本当に稀有な人間以外みんなそうだし、だからいろんなもので必死に補う必要がある。また、市井の医者が知っているALSの知識が現実のごく一面にすぎないのだって、この分業が極度に発達した社会では仕方がないのである。

だから、まるで自分が多くを知るものであるかのように装って、安易で過剰な想像力と、現状に関する貧しい知識を元に(ALS患者の)尊厳死について語るのは控えるべきである。私は未だよくわからないことが多すぎて尊厳死に賛成でも反対でもないが、この人の軽率な書き方や安易な結論には100%同意しかねる。たとえ医者だからといって(医者だからこそ)、他者の生や死への欲求を簡単に代弁することなどできないということを肝に銘じて欲しいと思う。

p.s. でも、こういう想像が案外一般的かもなぁ。。。うーむ。